1章 アパレル女性 絞殺事件-7 梶原祐樹
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
すいませんねーと軽く謝る雅樹に続き警部は口を開く。
「では3人目、梶原だ。この人は挨拶もはっきりしているしハキハキ受け答えするし、かなり好青年という印象だ。約2年前から1か月ほど前までやよいさんと交際していたようで、現場アパートには1年前に203号室が空いたのを機に引っ越してきたのだという。犬も飼っているし同棲するには部屋が狭すぎるということで、貯金が溜まるまではとお互いの部屋を行き来していたそうだ。まぁ結局フラれてしまったが、金の都合とペット可の物件探しの折り合いがつかずそのまま住んでいるそうだ。ただやよいさんとの間に目立ったトラブルは近隣住民に聞いても情報を得られなかった。本人いわくコンビニやゴミ捨て場で会っても軽く会話する程度の仲ではあったらしい。さすがにやよいさんが既婚男性と不倫していたことまでは知らなかったようで驚いていたがな。」
「簡単に書くとこんな感じかしら?でも梶原さんが本当はまだやよいさんを愛していて、自分を捨てて他の男に乗り換えたのが許せなかったっていう線も可能性としては十分アリよね。トラブルだって、他人が知らないだけで二人の間に何があったのかなんて当人同士しか分からないし。」
図をパパッと書きながら自分の考えを言うのり子、雅樹がその言葉に反応する。
「皆がそうじゃないッスけどね、オレは別れたらキッパリそこで友達知人関係として割り切っちゃいますね。グジグジ終わったこと言ってても仕方ないし、お互いイイ人見つけようぜってマインドに切り替えます。」
しかしのり子は反論する。
「あら、アタシはそんなキッパリ割り切れないなー。仮にも同じ時間を過ごした2人なわけだし、別れたから今までのことはナシ!なんてちょっと寂しくない?自分がフッたならともかく、フラれた側は割と未練残っちゃうと思うけどな。」
忠司が間に割って入る。
「オイ君たちの恋愛トークはいいんだよ。それより警部さん、この梶原さんは階段の横203号室に住んでいるんだから誰かが階段を慌てて駆け降りる音とか聞いたりしてないんですか?」
「そこは我々も聞いたが、しばらく階段横に住んでいるから慣れてしまって一々気にしていないと言っていたな。昨日も言った通り事件当時は大雨と落雷の注意報が出ていたほどで、それに驚いた犬も室内でワンワン吠えまくっていたそうだから、恐らく注意を払っていたとしても彼には聞こえまい。事件発覚時も警官が訪ねた時、服が犬の毛だらけになっていて白い毛のチワワが警官に向かってずーとワンワン吠えていたそうだ。」
「それより警部さん、不倫男の情報聞かせてよ。アタシのカンは、その不倫野郎が犯人だって言ってるんだけど?」
のり子が警部を促した。
22/9/14 読みやすいよう改行を増やしました。(序章から1-6までも完了)
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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