番外編➤愛里ちゃん、事務所に現る。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/4 17:45
ピンポーンと事務所のインターホンが鳴り、のり子が足早に入口へ。一方男性陣ふたりは妙に緊張の面持ち。
失礼します、と言いながらのり子の宣言通り西城愛里が入ってきたのだ。といっても依頼に来たわけではなく、この後のり子と買い物に行くためやってきた。
(のり子さんの言った通り、確かに賢そうな子だ。)雅樹はそう思った、姿勢正しく立ち細かな所作に品が漂っている。今日は父親が17時に帰ってきたので任せ、ここに来たようだ。私服に着替えてきていたが、制服を着ていたらきっと賢そうな優等生に見えるだろう。
「その節はお世話になりました。あれから少しずつですが父との会話も増えていて、なんだか天国のお母さんも笑ってるように思います。それでのり子さん、今日の買い物ですけど私本当に安いセーターとかでいいですから。」
遠慮がちに言う愛里に雅樹が乗っかる。
「そうですよのり子さん、だって今日と明日の飯代」
そこまで言ったところで、のり子が余計なことは言うなと鋭い目線を飛ばす。たちまち黙って下を向きへへへと苦笑いしてごまかす雅樹。さすがにこれ以上調子に乗るのはマズいと察したのだ。
なんですか?と不思議そうな愛里になんでもないわよ、と笑顔を作るのり子。
「中学生が遠慮なんてするものじゃないわ、それに『C-Zクリスマスコンサート』のチケットなんてアタシの夢のまた夢だったチケットよ!よくゲットしてくれたわ。ここでけちけちしたら天罰が当たっちゃうわよ、さぁ行きましょう。じゃあメンズたち後よろしく~。」
そう言いながら愛里の背中を押し出ていくのり子。愛里は入口で残された二人に失礼します、と一礼して出て行った。
「かわいくて礼儀正しい子ですね~。オレが同級生だったら惚れちゃいますよ、忠司さんはああいう子どう思います?」
雅樹がいつものように軽口を叩く。
「あのな、中学生の子に色目を使うんじゃない。ただきちんと挨拶はできるし、見た目もかなりかわいい感じだから彼氏でもいるんじゃないのか?最近の中学生はマセてるしな。川島田に聞いてみたらいいじゃないか。」
一方の忠司はいつもどおり冷静である。
「まぁ彼氏がいるならのり子さんを誘うより彼氏と行くだろうからそれはなさそうですね、なんせクリスマスコンサートですから。ただ好きな人くらいはいそうだなぁ、良いなぁ青春って感じで。オレもそんな時代あったなー。」
勝手に愛里の学生生活を想像しながら羨ましがる雅樹であった。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)