8章 負けられない戦い-菅野信哉の証言
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
もう調べられてますよね、僕の仕事のこと。前の会社は元々は開発系にいたのですがそこを外注することになり、6年前に営業職へ部署変えとなりました。でも僕のように人見知りで不器用なタイプが営業でやっていけるわけもなく、成績は後輩に抜かされ上司に毎日のようになじられ…耐えきれず半年ほどで依頼退職しました。そして事情を話して親父の会社へ再就職することになりました。親父は自分の息子が無職だということは許せないという世間体で僕の就職を許可しましたが、僕への信頼はまったくなくほぼ雑用の毎日。無駄に"社長の息子"という肩書きなので周囲の人も扱いづらかったみたいで、ますます腫物扱いのように接されていました。でも前の会社よりマシだと思っています。僕と親父の仲が良くないみたいな噂があるみたいですけど、会社ではただの社員と社長という感じで接するように言われていましたからよそよそしくて当然です。
ご存じの通り妻とは見合い結婚で知人女性からの紹介でした、失恋したばかりだから慰めてあげてと。最初はとてもきれいな人だと思ってドギマギしました、僕には高嶺の花だと思いました。その頃は地道に研究職に打ち込み、達也が産まれて幸せでした。しかし部署変えがあって…達也もまだ小学校に上がる前でしたし、妻に話して実家に帰ることにしました。意外と妻はすんなり受け入れてくれ、今の生活に収まったわけです。家が広くもともと部屋は空いていたし、孫と一緒に暮らせるならと両親も一応そこは喜んでくれていたようです。
妻が浮気していた…本当ですか?僕はわかりません、平日は基本的に出勤ですから。ただ妻はそんなことをするような女性に思えなくて、こんな僕と結婚してくれて実家に帰ることも許してくれたんです。僕は浮気のことも今初めて知って正直ショックですが、それでも妻のことを信じています。
事件の日は、たぶん僕が一番最後に起きたと思います。毎日6時30分にアラームをかけているんですが、この日はアラームの少し前に起きたのでトイレだけ済ませようと部屋を出ました。その頃親父の部屋に達也が遊びに行ったのか、さおりが呼び戻しに行く声が聞こえました。そして自室へ戻ると既にさおりと達也が部屋にいました。僕が部屋を出たのは2~3分くらいだった思いますよ、あとは達也の面倒を見ながら着替えたりして3人で食卓へ行くとすでに親父がいました。朝食が済むと親父がおふくろに言われてピルケースを取りに行って、僕たちは食器の片付けや戸締りを確認していました。
ピルケースはずっと親父が持っていたと思いますよ、出発前や空港でも達也に見せていましたから。
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