8章 負けられない戦い-7
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/4 12:35
一度事件を整理すると、こうなる。
菅野一家とその家政婦6人で新年に沖縄へ旅行へ行ったが、その飛行機の中で部品メーカー社長の一夫が心臓発作を起こして亡くなってしまった。ただし妻の忠告通りいつも持ち歩いている心臓病の薬が入ったピルケースは持っており、機内できちんと薬を飲んだにも関わらず死んでしまったのだ。
ここで一度回答者2人が質問に入る。
「ねぇ、アタシ思ったんだけど被害者は本当に心臓病の薬を飲んだのかしら?だっておかしいじゃないちゃんとお医者さんからもらった薬が効かないなんて。」
お、良い質問だなと忠司が返す。
「飲んだと思われたその薬なんだがな、外見がよく似たビタミン剤だったんだ。司法解剖して胃の中に残っていたそうだ。つまり一夫さんは心臓病の薬だと思ってビタミン剤を飲んだんだ。」
「やっぱりね…それにキャリーケースに入れた方の薬は機内ではすぐに取り出すこともできないし、ある種の計画犯罪よね、これ。」
のり子が言い終わると今度は雅樹が口を開く。
「それなら、被害者がなぜ効かないと呟いたことも辻褄があいますね。心臓病の薬だと思って飲んだのに、それはただのサプリメントで当然効果はないわけですから。そしてこれがのちに殺人事件と断定されたことを踏まえると、どこかのタイミングで誰かに薬とサプリメントをすり替えられていたってことでしょうか?」
その通り、と忠司はうなずく。
「そう問題はそこだ。同じ屋根の下に暮らす家族の者たちはもちろん、年明けまで一夫も休みでビジネスバッグを使わないことを考えれば、家政婦が前もってすり替えておくことも可能だ。うまくすれば自分が休みときに死んでくれて、そのときの完全なアリバイとなるわけだしな。だから11歳の達也君を除いて容疑者になったわけだ。」
そこで雅樹がうーんと唸る。
「でも犯人の名前が公表されなかったことを考えると、達也君がイタズラですり替えたのがこんな事件になって…という線も十分ありますよね。日本では未成年の犯罪は、本人の更生を期待しまたその後の人生を考え、原則実名での報道はされませんから。」
忠司がうなずく。
「お、鋭いな。まぁ余計なことを話すとヒントになってしまうからな、次は当時の関係者たちの証言を見ていくぞ。」
つーか腹減ったんすけど…と呟く雅樹。どうやら解決にはまだ時間がかかりそうだ。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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