8章 負けられない戦い-4
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/4 11:50
じゃあ俺は何にしようかなーと忠司がパソコンで出前のサイトを開いたとき、ちょっと待った!とのり子が声を上げる。
「なんですかのり子さん、まさか泣きの1回ですか?」
のり子に勝ち星をあげたのが嬉しいのだろう、余裕たっぷりに雅樹が言う。
「えぇそうよ、悔しいけど認めるわ。もう1回、もう1回だけチャンスほしいの。この後愛里ちゃんが来るんだから、やっぱり負けられないわ!」
どうやら本気で悔しいようだ。どうする?と忠司が雅樹に声をかける。
「いいですよ、のり子さんがそう言うなら。でもまたオレの勝ちだったら明日の分もお昼お願いしますからね!オレが負けたら引き分けってことで今日の勝負はチャラ、お昼はそれぞれ自腹。それでどうですか?」
雅樹の提案にのり子は再び燃えてきた。
「明日の分もってなったら、なおのこと負けられないわね…。でも条件はそれでいいわ、女に二言はないわよ!じゃあ八重島さん、もう1問よろしく。」
しかし急にもう1問と言われても、とっさに出てこないのが忠司である。しかしのり子の気迫は真剣だ、どうしたものか…。そこでふと、ひとつの案が浮かんだ。
「じゃあ俺が警察に所属していた時代に経験した、実際の事件を題材にしよう。今度は水平思考ではなく、推理だ。」
忠司がそういうと、二人は別々のリアクションを取った。
「実際に起きた事件ね、興味あるわね。」
「腹減ってきたんスけど…。」
忠司はある事件の捜査班として駆り出されていた。それは平成の時代がそろそろ終わろうという年の1月、年明け早々に起きた。忠司は年末年始も出勤であり、駆り出された。
【事件概要】
亡くなったのは菅野一夫68歳で新年早々、一家で家族旅行へ出かけたときだった。一夫に同行したのは妻の節子66歳、夫婦の息子信哉43歳とその妻さおり42歳にその子ども達也11歳。さらにいつも菅野邸に来て家事などを行い、家族同然の付き合いをしている家政婦の坂本久子49歳。達也が久子によく懐いており、一緒に行きたいと駄々をこねたため同行したという。
一家と家政婦は成田空港で合流し、3泊4日で一夫の生まれである沖縄へ向かうことになっていた。だがその道中の飛行機内で一夫はかねてより抱えていた心臓病が悪化し亡くなってしまった。気圧などの関係で発作が起きたと見られた。だがこれは後に、殺人事件だとされ犯人も逮捕された。
「この事件の犯人をズバリ突き止めた方の勝ちとしよう。」
忠司がそう言うと、のり子が苦々しく口を開く。
「当然だけど、概要だけじゃよくわからないわね。まぁとにかく、質問タイムは詳細を聞いてからにしましょうか。」
「実際の事件」と作中で言っていますが、当然"フィクション世界で起きた事件"であり現実の事件とは関係ありません。
今回は事件の答えをあとがきでネタバレしませんので、一緒に推理してみてください。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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