8章 負けられない戦い-3
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/4 11:20
「それでは質問タイム、どうぞ。」忠司のその言葉で、二人はほぼ交互に質問し出した。
雅「その夫婦は人間ですか?」
忠「はい。」
の「Aの夫婦は正当な理由で逮捕されましたか?」
忠「はい。」
雅「Bの夫婦が飼っている犬の性別は関係ありますか?」
忠「いいえ。オスでもメスでもストーリーが成り立ちます。」
の「じゃあ、犬の種類は?」
忠「関係ありません。」
雅「Aの夫婦は何の罪状でしたか?」
忠「良い質問です、現在の日本に当てはまるなら"器物損害"や"住居侵入"に当たるでしょう。」
の「A夫婦とB夫婦は仲が良かった?」
忠「はい。普段からお互いの家を行き来し、犬も両方に懐いていました。」
雅「犬が何かした?」
忠「確信に迫る質問です!その犬は、とても嗅覚がよかったのです。」
ここで雅樹がフフフ…と笑う。どうやら答えが浮かんできているようである、回答しないあたりもう少しヒントを得ようとしているのか。のり子はその様子を見て少し焦る、(いやでもハッタリの可能性もあるわね…)。
の「両夫婦が住んでいた場所は関係ある?」
忠「はい、その夫婦が住んでいた周辺はなかなか花が実らないところだったのです。」
「分かりましたよ、のり子さん!」
雅樹が先に声を上げる。では回答をどうぞ、という忠司に雅樹は自信満々に答える。
「これ、童話の花咲かじいさんがテーマっすね?A夫婦はB夫婦の家の犬を強奪し、その犬が言うことを聞かないと殺してしまう。これはさっきのヒント"住居侵入と器物損害"に当たるし、B夫婦が飼い犬の灰で辺りの草花を実らせたから国から感謝された。そして悪事がバレたA夫婦は逮捕された、どうですか、辻褄完璧でしょ!」
得意気に語る雅樹に、軽く拍手しながらお見事と言う忠司。のり子は悔しそうである。
「なんで?ヒントだけ整理したんじゃ花咲かじいさんって辿りつくのは難しいわよ?」
しかし雅樹は得意気に語る。
「いいですかのり子さん、さっき忠司さんはオリジナルストーリーを作り出すのは苦手だと言っていました。裏を返せば、実在の事件やお話を題材にしてるんじゃないかと思ったんです。即答される危険があるというのは、誰もが知っていることだからでしょうか。花咲かじいさんは子供から大人まで、誰だって知っていますからね。あとは片方の夫婦に、犬。これで閃きました。」
キーッ!と悔しそうなのり子。勝負あった、雅樹の勝ちである。
勝負は次が本番です。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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