8章 負けられない戦い-1
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/11/4 10:45
華美とのジョギングを終え疲れたーと言いながら事務所に出てきた雅樹。どうやら二人のジョギングダイエットは続いているようである。そんな雅樹をよそに、明らかに上機嫌なのり子。忠司はその様子に気づいてはいたが、いつものようにパソコンでネットニュースから情報収集だ。
「どうしたんですかのり子さん、やたら機嫌がいいですね?」
雅樹が声をかけると、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの勢いでのり子が答える。
「やっぱ分かる?あのね、実はアタシの大好きなバンド"C&Z"のクリスマスイベントに行けることになったのよ!ちょっと早いけど、いつも頑張るアタシへのクリスマスプレゼントってことね!」いろいろツッコミどころはあるのだが、C&Zと言えば今年で活動20周年の実力派バンドである。毎年数回あるライブのチケットは毎回ファンクラブのチケット抽選でも取りづらく、そのため転売屋が手に入れたときはボッタクリのような価格でオークションに出されたりしてその都度ニュースになるほどの人気なのだ。
「えっすごいじゃないですかのり子さん!会員の抽選に当たったんですか?」
のり子がC&Zのファンクラブに入っていることは二人も知っていた。だがのり子はフフフ…と不敵に笑うと告げた。
「手に入れたのはアタシじゃないわ、愛里ちゃんよ。この前の依頼の時に仲良くなった、西城愛里ちゃん。彼女が抽選に当たってね、ペアチケットだからアタシも一緒にって誘ってくれたのよ!もちろん二つ返事でOKしたわ。」
興奮気味に語るのり子と対照的な忠司が聞く。
「だがC&Zと言えばメインのファン層は30代前後だろ?中学生の娘さんがファンクラブ入ってるなんて珍しいな。」
あぁそのこと、とのり子は返答する。
「あの子のお母さんがファンだったみたいよ、それで家でよく聞いていて愛里ちゃんも一緒に好きになったみたいね。この前泊まったとき、愛里ちゃんの部屋にもポスターとか貼ってあったわ。で、昨日の夜アタシのとこに電話かけてきたのよー当たりましたッ!って。だから今日、愛里ちゃんここ来るからね。」
その発言を聞き、今までフーンとスマホを見ながら話を聞いていた雅樹がパッと顔を上げる。
「えっ、のり子さんが言ってた女子中学生が?」
「そうよ、言っておきますけどヘンなこと吹き込んだりしないように。ライブ連れて行ってくれるお礼に、その日のための服を買いに行くのよ。もちろんアタシのおごり!愛里ちゃんは遠慮してたけど、これくらいしないと罰当たりそうだもんね。」
のり子の話では"利発そうな女の子"だとしか聞かされていなかった二人は、いったいどんな子だろうと思った。一方のり子は早く夕方にならないかしらと心ここにあらず状態だ。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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