7章 難しいお年頃-12
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/25 16:45 事務所
退所前にのり子は愛里にメッセージを送ってみる。やはりというか、愛里はすでにそのパスワードを突き止めていた。依頼だから父親の正俊に教えることも伝えると、それも了承してくれた。のり子さんも一緒に見ますか?と誘われたが、それは断った。これは西城家の問題であり、のり子はパスワードの解読を依頼されただけなのだ。これ以上他人の家庭事情に踏み込むのは失礼だと判断した。
少しして正俊にもメッセージすると、すぐ返事がありすぐに帰ると言ってきた。一刻も早く中を確認したいのだろう。のり子なりの気遣いで、スマホを返すついでに真由ちゃんを1時間ほど面倒見ると言って出た。真由の面倒を見ながらでは、二人は集中できないだろう。
「そういうわけだから、あとよろしくー。」
そう言ってのり子は入り口の看板をCLOSEに変えると足早に西城家へ向かった。
2022/10/25 17:30
愛里はパスワードを解いたとき、一人で中身を見る勇気が出ず知らんぷりしていたという。見たいような、見たくないような複雑な気持ちで今日まですごしていたという。あの人と二人は気まずいから、とのり子に一緒にいるよう頼む愛里。だがのり子は真由ちゃんの面倒は見るわと丁寧に断った、きっと亡くなった真里さんもそうしてほしいだろうと思うからだ。
「じゃあ真由ちゃん、お姉さんと焼き芋食べに行こっか!」
というと真由は焼き芋ー!と顔を輝かせた。前回買い出しに行ったスーパーの近くで秋の味覚フェアというイベントが開かれているのを、のり子は知っている。
のり子が真由の手を引いて西城家を出ようとすると、正俊が帰ってきた。1時間ほど真由ちゃん借りますねと笑顔で伝え真里のスマホを手渡すと、のり子は出発した。
半分こにした焼き芋を頬張る真由を見ながら、のり子の心配はあの二人だ。今頃一緒に中身を確認しているころだろうか?本当は真里さんは、あの二人でパスワードを解いてほしかったのではないか、だとしたら私は余計なことをしてしまっただろうか…。
考え事をしていて顔がこわばっていたのだろうか、おねーちゃん?と不思議そうにのぞき込んでくる真由にハッとするのり子。慌てて笑顔を作り、寒くなってきたからコーンスープでも飲もっか?と提案すると真由はやったーと喜んだ。
そうだ、私が心配しても仕方がないのだ。今はこの子の面倒を見ることに集中しよう。
同時刻 事務所。
「あー!のり子さんにナニかあったのか聞くの忘れちゃいましたよ。」
そう言う雅樹に、まだ言ってたのかと飽きれる忠司であった。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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