1章 アパレル女性 絞殺事件-5 滝美野あずさ
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
翌日も事務所の入り口にある札を17時少し前にCLOSEへ変えた頃、警部がやってきた。
のり子が先回りして淹れておいたお茶をテーブルに並べると、再び情報収集を始める。
「それで警部さん、今日また関係者たちに話を聞いたんでしょう?やっぱりアタシの言う通り痴情のもつれ?」
あのなぁ、と言いかけた忠司を遮り警部が話し始める。
「まぁ順番に話そう、職場でのやよいさんと滝美野さんだが周囲から見てもあまり仲がよさそうではなかったらしい。やよいさんは滝美野さんを理不尽に叱ったりすることもあったらしく、滝美野さんは配置換えの希望まで出していたようだな。やよいさんは滝美野さんに自分の持ち場を取られるのではという考えがあったのかもしれないな、テリトリー意識の強い人にはありがちな行動だ。そのためプライベートで遊ぶようなこともなかったらしい。それとやよいさんの上司であり不倫相手である山上という男は、職場の女性たち何人かに手を出していたらしくソッチの方もヤり手だったようだな。」
ほら見なさいよ、とのり子は得意気だ。警部はそれを横目に見ながら続ける。
「滝美野さんいわく2か月ほどの間、上司の山上とは男女関係にあったそうだ。山上が結婚していることはもちろん知っていたが、彼がいいなと呟いた香水をプレゼントするなど不倫関係中は結構本気で好きだったという。ところが事件の1か月ほど前に突然、山上がやよいさんへ乗り換えたんだな。滝美野さん自身は、あんな最低男もうどうでもいいわと割り切っていた様子だが。」
なるほど、被害者と第一発見者はただの職場の先輩後輩というだけの関係ではなかったのか。忠司が手帳にメモしながら独り言をつぶやく。
「滝美野さんも随分セクシーな女性でな、自分のスタイルに自信があるのか今日もボディラインがしっかり出るワンピースで目のやり場に困ってしまったよ。」
そこで雅樹がすかさず口を挟む。
「今日"も"ですか?」
「あぁ事件発生時もブラウスを着ていたんだが、第3ボタンまで開けていてな。今はまだ残暑が厳しく暑いのは分かるんだが…。当初は新人の男性警官に事情を聞かせていたんだがどうも刺激が強かったようでな、途中で女性警官に交代してもらったくらいだよ。」
「フェロモンむんむんなのねーその滝美野って女性。まぁスタイルに自信があったらアピールしたくなる気持ちは分かるわ、そのために世の女性はダイエット頑張るくらいよ。」
とのり子は同調する。
「山上って上司もそんなセクシーな女性が職場にいて、思わず手を出しちゃったってとこでしょうかね?」
雅樹が言ったところで、のり子がすかさず口を挟む。
「だからって浮気しちゃダメよ?まぁ雅樹くんの場合は浮気の前に彼女を作るところから、でしょうけどね?」
「あのね、オレは彼女を"作らない"だけです。面倒くさいんスよね~いろいろと。」
「はいはい、負け惜しみは結構よ。」
そんなやりとりはもう慣れっこだという感じで警部、次の情報を。と忠司が促した。
22/9/14 読みやすいよう改行を増やしました。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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