7章 難しいお年頃-7
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/22 23:40 西城宅
その後少し話ながら勉強していたが、私そろそろ寝ようかなと立ち上がった愛里。その前にのり子は一つだけ聞いてみた。
「ね、そういえば正俊さんが『下の子はなかなか泣き止まないのに、愛里があやすとすぐ泣き止んだ』と言ってたの。何かあやし方にコツがあったの?ほら私たまに何でも屋の依頼としてベビーシッターというか子供の面倒見る機会もあるし、将来お母さんになるかもしれないじゃない?だから後学のためにも聞いておきたくて。」
あぁそのことですか、と言い愛里は続ける。
「あの子、座ってあやさないとダメなんです。高いところがイヤなのかな、小さい子が喜ぶ高い高いも真由には逆効果。赤ちゃんの頃、私が疲れて座ってあやしたらすぐ寝ちゃって、それ以来座ってあやすのがコツみたいになってたの。ホラあの人は背が高いでしょ?だから真由、あの人に抱っこやおんぶされるのもイヤがるってわけ。私があやしてるとき気を使ってるのか、いつもどこかに引っ込んじゃうから座ってあやしてるって気づいてなかったんだと思いますよ。それじゃおやすみなさい。」
そう言って、愛里は自分の部屋に引っ込んだ。
どうやら正俊はまだ帰ってくる気配がない、スマホを手に取るともう日付が変わってしまっていた。飲んで帰ってくるみたいだから、お茶漬けの用意でもしておこうかしら…そうして立ち上がったのり子の目に、ふとさっきまで姉妹が見ていたアルバムが映った。出しっぱなしだったのかリビングの本棚から落ちたのか、床に落ちている。何気なく開いたそのアルバムには、幼い頃の愛里と手をつないでピースしている真里の姿などが何枚も収められていた。キレイな人…そう呟きながらアルバムをめくっていくと、最後の方は正俊と真里のツーショット写真もあった。真里のお腹が大きいことから、出産の少し前に撮った写真だろう。そしてアルバムの一番後ろには、恐らく真里のであろう字で"愛里と正俊さん、これからは協力してヨロシク!"と書かれていた。
(でも思春期の子にとって、親の離婚と再婚、さらに妹の出産と母親の死別…全部重なるなんてちょっと不憫よね。愛里ちゃんが距離置いちゃうのも分かるなぁ、かと言ってお二人も真由ちゃんのことを考えたら籍入れたかっただろうし。)のり子は複雑な思いでアルバムをそっと本棚に戻し、音を立てないよう気を付けながらお茶漬けの準備を始めた。と言っても買い出しのときに買ったお茶漬けの素と梅干をご飯にのせてラップをしただけだが。梅干しは二日酔い防止にも効果があるって、誰に聞いたんだっけと思いながら。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。