7章 難しいお年頃-5
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/22 22:15 西城宅
愛里が真由とお風呂に入り寝かしつけている間に、のり子は買ってきた食材のあまりを翌日の朝食に使えるよう下ごしらえし洗い物を終わらせた。土日は保育園が休みのため真由の分を別にするのも忘れなかった。依頼されてはいないが、のり子なりの気遣いである。
「あの人、まだ接待続くってさっき連絡はいりましたよ。」
愛里がそう言いながら参考書を開く。受験生なのでやはり勉強はしておきたいようである。そう、と答えながらこういうとき単刀直入に質問していいのか、別の話題から入った方がいいのか。考えあぐねるのり子を見透かしたように愛里の方から口を開いた。
「普通は父親のことをあの人呼ばわりしていたら、良く思わないですよね。たぶん聞いてると思いますけど、私あの人とは血がつながっていないんです。」
そう言う愛里に対して、そうねぇと言いながらのり子は言う。
「余計なお世話かもしれないけど、愛里ちゃんの気持ち分からないでもないわよ。アタシもね、実の父親とはあんまり仲がよくなかったから。」
え、と言いながら参考書から顔を上げる愛里になおも続けるのり子。
「アタシのお父さんはね、お母さんと喧嘩ばっかりしてたのよ。子供心になんでお母さんと喧嘩ばっかりして、この男はサイテーだって思ってたわ。でも大人になってから分かることもあるのよ、アタシの父親は不器用な人だったの。愛情表現が下手っていうか…それがお母さんにとってはイライラの原因だったのね。」
よくわからない、という表情の愛里。それを見ながらフフッと笑い、さらに続けるのり子。
「今はまだ分からないでしょうね、アタシだって思春期の頃わからなかったから。でも血のつながりなんて関係なく、正俊さんはちゃんと愛情を持っていると思うわよ。じゃなかったら、心配だからってアタシを寄こしたりしないと思うのよ。まぁ無理に仲良くしろとは言わないし、アタシにそんなこと言える権利はないけどね。」
「お母さんと同じこと言うんですね。」
愛里は寂しそうにうつむきながつぶやき、続けた。
「お母さん、真由を出産したときに死んじゃったっていうのは聞きました?でも真由を産む一週間前くらいかな、私に同じことを言ったの。『正俊さんは大丈夫よ、きっと愛里を大切にしてくれるから』って。だけど私はまだどう接していいのか、どう接するのが正解なのか分からない…。のり子さんは、今でもお父さんと仲悪いんですか?」
そんな愛里の質問に、のり子はうーんそうねぇと一拍おいてから答える。
「微妙、かな?実家に帰ったときに挨拶くらいはするけど。でも嫌いってほどじゃなくて、なんか話題が分かんないのよね、何話したらいいかなって感じ。だけどね、きっとそのうち分かり合える気もするのよねーなんとなくだけど。」
そんな返答になんですか、それと笑う愛里。
「女の勘ってやつかしらね?」
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。