7章 難しいお年頃-3
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/21 10:00
今日はのり子が西城の家へホームキーパーへ行く日。夕方から仕事ということで、事務所へは来ていない。
「いいなぁのり子さん、いわゆる直行直帰ってやつですか。オレもそれがいいなー依頼終わったらすぐ帰る的な。」
雅樹が言うと忠司がPCに目を向けたままで答える。
「川島田の場合、いつ終わるか分からんからな。依頼主が深夜に帰ってくるようならそのまま泊めてもらうとも言ってたぞ。」
そう言い終わらないうちに、雅樹がえー!と大声を上げる。
「あのイケオジの家に泊まるんですか?そのままあの二人…なんてことになったらどうするんですか、どうしましょう忠司さん!」
なぜかヒートアップする雅樹に対し冷静な忠司。
「雅樹はなんかヘンなこと考えてるだろ、言っておくけど中学生の娘がいる家なんだからな。ま、週が明けたら本人に聞いてみるんだな。」
同日 16:30 サンフラワー保育園前。
のり子は下の娘を迎えに来るであろう西城愛里を待っていた。だが肝心の愛里がどれなのか分からない、保護者でないため保育園の中に入って先生に聞くわけにもいかない。学校帰りにそのまま寄ると聞いていたから、制服で迎えに来る子が愛里だろうと検討をつけ保育園前で待っているわけだ。
「あの、もしかして今夜うちに来るお手伝いさんですか?」
利発そうな女の子に話しかけられた。もしかしてあなた西城さんの?とのり子が尋ねるとはい、と答える。
「私が愛里です、今夜はよろしくお願いします。ちょっと待ってください、今真由を迎えに行ってきますから。」
そう言って足早に保育園に入っていった。
少しすると愛里が片方の手で小さい女の子と手をつなぎながら、もう片手で園児用の荷物バッグを抱えて出てきた。学校に通う自転車に自分のバッグも入れていると、結構な大荷物である。なので雨の日は一度家に帰って荷物を置いてから出直すらしい。真由は見慣れないのり子に最初警戒していたが、のり子が目線を合わせるようにしゃがんで笑顔でこんにちはとあいさつすると、警戒を緩めたのかちょっと恥ずかしそうにこんにちはと答えた。そのまま西城家に向かう3人。そこでのり子が疑問に思ったことを聞く。
「ねぇ愛里ちゃん?どうしてさっきアタシがお手伝いだってわかったの?」
愛里は慣れたように片手で自転車を押し、もう片手で真由と手をつないで歩きながら答える。
「あの人から川島田さんの特徴は聞いてましたし、お迎えに来る他のお父さんお母さん達の顔はだいたいわかりますから。それに保育園の前で何もしないであそこで待ってたから、誰かのお迎えなら出てくるのを待つために、普通は保育園の方へ目をやるでしょ?」
なるほどこの愛里ちゃんはけっこう賢いらしい、でもお父さんのことをあの人って呼ぶのね。年頃の女の子だしやっぱり難しいのかしら、のり子はそう感じた。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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