21章 来客 -34
全員が2階から降りてきたあと、現場の実況見分が行われた。関係者それぞれに事件当日の自分になりきって行動してもらうのだ。
まずリビングから佐藤さんが昼食で使った食器を洗うために、お盆にまとめてそれを持ちキッチンへ。次に良元さんになりきった警部が「コーヒーが飲みたい」と言い残し、良元さんの部屋へ引っ込む。狭霧さんがまずコーヒーを淹れるためにキッチンへ、そのあとすぐ栗原さんと森屋さんも順に立ち上がりキッチンへ向かう。
洗い物をする佐藤さんの横で電気ケトルで湯を沸かしながらコーヒー豆を砕く狭霧さん。そんな彼らの邪魔をしないように奥の戸棚へ近寄り、使い捨てカップの袋を取り人数分のカップを狭霧さんの眼の前にちょうど五角形の形を作るように並べた栗原さん。彼は証言通りカップを並び終わると余ったカップを戸棚へ戻しキッチンを出てリビングへ戻る。入れ替わるように森屋さんが戸棚へ近寄り蓋とストローを1つずつ取り出す。
そうしている内にコーヒーのドリップが終わった狭霧さんが5つのカップへ同じくらいの量になるようにコーヒーを注ぐ。証言通り彼はカップには触らなかった。注ぎ終わると森屋さんが手前の一つに蓋を取り付けてからストローを刺し、洗い物が終わった佐藤さんは当然それを良元さんの分だと解釈し蓋とストローの付いたカップを持ってキッチンを出る。リビングでくつろぐ栗原さんの前を通り、良元さんの部屋にいる警部へコーヒーを渡す。狭霧さんはその間に自分の分のカップを持ってリビングに戻ってきたようだ。そして佐藤さんがキッチンにいる森屋さんに「私もストローほしい」と声をかけると、森屋さんが「じゃあおれも使おうかな」と返事をし戸棚を開ける音が聞こえた。追加で蓋とストローを出すためだろう。そして2人はそれぞれの手に、蓋とストローがついたカップを手にリビングに戻ってきた。
そのまま事件当日のように狭霧さんはギターの練習をするフリをしたり、栗原さんがLive配信を行うフリをしたりする。そのまま2時間が経過したという設定にする。
「なぁ皆、良元のやついくらなんでも静か過ぎないか?トイレにすら出てこねーぞ?」と栗原さんが切り出す。
「そうね。いつもはコーヒーのおかわりを要求してくるんだけど、今日は来ないね」と佐藤さん。
「作詞作曲もどこまで進んでいるのか確認したいし、狭霧くんちょっと声かけてみてよ」と森屋さん。
「分かりました」と狭霧さんが立ち上がる。彼が指名されたのは、単に部屋に一番近い場所に狭霧さんがいたからだろうか?そしてドアを開けて良元さんの死体に気付いたという流れであった。
「ほらね美羽ちゃん、おかしな人が一人いるじゃない。」
そうのり子先輩に言われるがさっぱりな私。もう、イジワルしないで教えてくださいッ!
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




