7章 難しいお年頃-2
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/18 12:20
正俊は現在、中学生3年生の娘と2歳の娘との3人暮らし。妻の真里は3年前、下の子を自分の命と引き換えに産んだという。もともと医者から危ないかもしれないと言われていたが、それを承知で出産した。普段は下の子を保育園に預け、上の娘が学校帰りにお迎えに行ってくれているらしい。父親である自分もいつもは遅くても19時頃帰れるようにしており、会社側にも事情を話してあるので同僚も協力してくれている。…のだが、週末の取引先は何かと口実をつけて飲み会を開く重役がおり、中学生とはいえ女の子だけで留守番させるのは忍びない、それで頼みに来たという。
のり子は16時から正俊が帰宅するまでホームキーパーしてほしいとのこと、下の子はお姉ちゃんが面倒見てくれるが、受験生なので可能なら下の子の面倒も見てくれたら助かるのだという。晩御飯は出前でもなんでもいいとのこと。
だがのり子には気になる点があった。
「失礼かもしれませんが娘さん、歳が一回り以上離れてるんですね。」
のり子が依頼内容を書き取りながら聞くと、正俊が苦い顔で答える。
「私と上の娘の愛里は血がつながっていないんです。妻は元々バツイチで、愛里は連れ子でしたので。愛里が中学校に上がるタイミングで下の子が妻のお腹にいたので籍を入れました。やはり年頃の女の子は難しいですね、妻がいなくなったのも余計大きいのでしょうが、私になかなか心を開いてくれなくて…。ただ私には家族の一人で娘に違いありません。」
どうやら家庭環境が少し複雑なようである、のり子はそこが少し心配だった。
「大丈夫かしら、ただでさえ心を開いていないのにアタシがお邪魔しても。」
しかし正俊によれば今朝、愛里に週末遅くなるからその日だけお手伝いさんを頼むからねと話してあるという。
「愛里は賢い子ですから分かってくれていると思います。女の子だからでしょうか、下の子も私があやすより愛里があやすほうがすぐ泣き止んでいたし、寝かしつけも上手でね。父親としてはすぐ家に帰って受験勉強でも友達でも好きにさせたいところなんですが…。」
なんとも複雑な親心、といったところであろう。
「分かりました。ではこの依頼、アタシが正式に引き受けます。そんな心配そうな顔しないでくださいよ、女は女同士!それに思春期は誰でも通る道ですからね。」
会社の休憩時間に来たということで、正俊は帰っていった。娘の愛里はオムライスが好物だというので、早速スマホアプリでオムライスのレシピを検索しまくっていた。
「あーあー、イケオジ相手だとやる気マンマンですねぇのり子さん!」
そんなのり子へ茶化すように言う雅樹。忠司はそうだな、とだけ答え昼食の出前のチラシに目を通していた。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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