21章 来客 -14
私がのり子先輩へ印刷したばかりでまだ温かい書類を渡すと、彼女は軽く説明しながら対面の依頼人へ渡す。男性は黒色のロングTシャツにデニムパンツ、白いスニーカーと至って普通の格好だけど、Tシャツのプリントがかなり派手で目を引く。どこかのバンドか音楽グループのロゴだろうか?身長はさっき入口であったとき私より頭一つ分くらい大きかったから、170cm~175cmくらいの標準体型、しかし男性にしては髪が長めだ。女性で言うところのボブヘアーくらいの長さはあるだろう。目はくりっと大きく鼻は小さめで厚めの唇、もしこの人にスカートなどを履かせたら女性に見えなくもない。それに髪に隠れて目立たないが、よく見ると両耳にピアスが3つずつ付いている。この人は普段なにをしている人なのだろう?そんなことを思いながら私が引っ込むと、のり子先輩が依頼の確認を行う。
「少しは落ち着きましたか?では改めまして、お名前と年齢と職業と依頼内容を。」
男はそわそわしながらものり子先輩に言われた通りに回答を始める。
「僕の名前は狭霧 巧です、年齢は今年32歳でアルバイトをしながらインターネット動画配信者として活動をしています。今、殺人の容疑で疑われているんだ!それでこの事務所に相談したら助けてもらえるかも、と捜査に来た警部さんから聞いて飛んできたんです。犯人は僕じゃない!確かに最初に死体を発見したのは僕だと思うけど…。」
どこか煮えきらない態度の男。それは対面に座って話を聞いているのり子先輩も同じなようだ。
「思うけど、というのは?それに殺人容疑で疑われているから助けてくれ?少し混乱されているようですが、詳しくお話いただけますか?」
「それは俺から説明しよう。」
所長がパソコン席から立ち上がり、来客用ソファーへホワイトボードを引いて向かう。あらかじめ書き込んであったのか、ホワイトボードを反転させると事件概要などがマジックで記入されていた。
キッチンにいた私の横に、またしてもいつの間にか横にいた雅樹先輩が耳打ちする。
「昨日、忠司さんはオレ達に依頼人が来るよと教えたあとどこかへ出かけただろう?あれきっと警部のところへ行っていたんだね。今日こうなることは予想済みだったんだ。」
「えっ所長って警察と知り合いなんですか?」
「美羽ちゃんまだこの事務所に入ったばかりだから知らないよね、あとで説明するけどまぁそういうこと。それより静かに、事件の説明が始めるよ。」
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




