1章 アパレル女性 絞殺事件-4
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
しばらくそれぞれ考えていたが、雅樹が口を開く。
「二人はどう思います?」
「私は上司の山上しかないと思ってるわ。浮気を奥さんにバラすとかなんとか言われて、カッとなって殺しちゃったのよ。実際多いじゃないそういう事件。男女の関係にあった相手なら、無防備に玄関を開けてしまうのも納得よ。女のカンが、痴情のもつれだって言ってるわ!」
決めつけるようなのり子の口調に雅樹は苦笑いしながら言う。
「女のカンで解決するなら、捜査員を全部女性にしたらどんな事件も即解決なんですけどね。忠司さんはどう思います?」
「この資料だけではなんともな。それぞれ動機っぽいものもあるし、アリバイがない以上全員に犯行が可能だ。気になるのは、下の階の滝美野さんが悲鳴が聞こえたから部屋を訪ねたと言っていて、それは死亡推定時刻とも合致している。ただ下の階に聞こえたのに、同じ階の住人2人が聞いてないのは少し引っかかるな。犬は常にワンワンうるさかったのか?ヘッドホンも外の音が聞こえないくらい爆音だったのか?」
冷静に資料を分析していく忠司。
「事件解決には、まだパズルのピースが足りないですね。のり子さんの言うように、無防備にドア開けているところも気になる。一番トラブルになっていそうな隣人である伊達さんの場合、訪ねてきたらまずドアロックかけたままで応対するでしょうし。」
雅樹もまだ考えあぐねている。
「でも単身赴任ってことは奥さんがいるわけでしょ?とんでもないわよねこの山上って男。犯人じゃなかったとしても、奥さんには伝えてあげたいわね。女の敵よ!」
のり子は帰り支度をしながらボヤいていると、忠司がクギを刺す。
「おい余計なことするなよ、俺らはあくまで依頼や相談を受けてから、仕事として動くだけだ。気持ちは分かるが、私情と仕事は区別しとけよ。」
分かってるわよーじゃあ戸締りよろしく、と言いながらのり子はさっさと帰っていった。
いつもこの事務所の始業前開錠と戸締りは忠司と雅樹が、1週間交代で行っていた。警部にもらった資料を保管棚にしまいながら、雅樹はそこがちょっと不満だ。
「全く、のり子さんだって戸締りくらいやってほしいですよね。いつもああやって自分だけさっさと帰っちゃうんですから。」
「"女子は朝の準備も、仕事のあともやること沢山"らしいからな。いつものことさ。」
戸締り確認を終えた忠司は特に気にもしてないらしく、雅樹と2人事務所を後にした。
22/9/14 読みやすいよう改行を増やしました。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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