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何でも屋 H・M・Oの依頼簿  作者: ゆうき
20章 ウワサ話にご用心
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20章 ウワサ話にご用心 -15

 私は一刻も早くその答えとやらを聞きたかったのだけど、のり子先輩は教えてくれず、その後2週間ほど事件のあった住宅街に彼女は通い続けた。私は今日一緒に出勤している雅樹先輩に聞いてみる。

 「もうのり子先輩ってば、結論が出たんですよね?なんでさっさと依頼人呼んで説明をしないんでしょうか?」

 「あはは、美羽ちゃんはやっぱりまだまだシロウトだね。あの人は裏取りに行ってるんだよ。主婦たちの話を聞いて大まかに事情を掴んだみたいだけど、もし主婦の人たちが勘違いで話をしていたり嘘を吐いていたりしたら厄介だろう?だから別のご近所さんや被害者の婚活パーティに参加したことがある人にも話を聞いて、総合的に判断しようとしているのさ。簡単に例えるなら裁判もそうだろ?犯人の刑罰を確定するまでには弁護士の話を聞き、検察官の話を聞き、被告の話を聞き、目撃証人の話を聞き…そうやって情報を集めてからジャッジを下す。のり子さんも同じさ、自分の考えや推理が間違っていないかを、今一度確かめに行ってるんだ。オレ達はお金をもらって依頼を受けているからね、いい加減なことはできないのさ。覚えておくといいよ。」

 な、なるほど。まだ簡単な依頼しか受けていない私には想像もつかないことだった。こういう情報集めや浮気調査の依頼は、とにかくその情報が正しいかの確認をしなくてはならないのね。

 「だって間違った情報だったら大問題だからね。例えば浮気調査、ただの男女の仕事仲間なのにこっちが早とちりして不倫関係にあります!なんて断定したら名誉毀損で何百万と罰金払う羽目になる。相手の人がそれで会社をクビになったりしたらさらに損害賠償や慰謝料も上乗せされて…って、一回のミスがとんでもない問題に発展するんだよ。」

 「お、覚えておきます。」

 考えてみれば何でも屋さんの仕事って、例えば引っ越しの手伝いやベビーシッターなどの依頼で他人の家やプライベートを容易に覗くことができるけど、それは同時に自分がちょっとでも油断してしまったら守秘義務違反などに簡単に問われるリスクでもあるわけだ。

 「雅樹先輩は平気なんですか?」

 「まぁ最初は誰だって怖いよ、オレもそうだったし。徐々に慣れるよ。でも何でも屋で働いてるっていう身分は容易に明かさない方がいいし、事務所から一歩でも外に出たら仕事で見聞きしたことは一切口にしないってことが一番自分の身を守る基本だね。事務所外での話し相手が自分の肉親だとしてもね。」


 そうしていたらのり子先輩から雅樹先輩に電話が。彼は着信音を所長・のり子先輩・私でそれぞれ変えているらしく、一緒に働いていたら分かるようになった。

 「のり子さんどうでした?」

 『バッチリね、アタシの睨んだ通りよ。』

 「それはよかった。警察にはタレ込むんですか?」

 『その必要はないわねー、犯人の強盗殺人事件などの容疑はきちんと固まっているわけだし。アタシ達がやっているのは犯人の動機の深堀りだから、金目当てで侵入したという大元の部分を警察が掴んでいる以上アタシ達が出る幕じゃないわ。今回は依頼人に報告して終わりよ。』

 今回は…?ということはここの事務所はときどき警察に協力していたりするってこと?物言いたげなアタシの視線に気づいた雅樹先輩。

 「あー美羽ちゃんはまだ入って数ヶ月だもんね。そうだよ、事件によっては新事実が浮かんだら警察に情報提供することもあるよ。」

 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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