20章 ウワサ話にご用心 -14
カフェのテレビでも引き続き例の事件のニュースが流れている。アタシ達は誰ともなしにそのニュースを見始めた。
『えー新たに発表された情報です。先日の新宿区での強盗殺人事件ですが、犯人は神奈川県横浜市出身でやはり被害者との関連はないとのことです。しかし警察によりますと、犯人は事件の数ヶ月前から仕事の都合で何度か被害者の自宅付近を訪れたことがあり、そのときに狙いを定めたと自白したそうです。警察では他にも不審な点がなかったかを、再度の現場検証を含めて引き続き捜査していくとのことです。』
「ほらね。あの犯人、東京の人でもないんだから、わたくし達が知り合いようがないわよね。」
「仕事の都合で来たときに既にこの辺りへ狙いを定めて物色していたってこと?いやだわね、怖いわ。ワタシの家って西野さんの家みたいに、貴重品を隠して置ける地下室とかないし。」
「あら?あっても駄目よ、だいたい節子さん、地下室から出てきた犯人と鉢合わせしちゃったってニュースで言ってたんだから。」
「犯人の職業って自動車修理工でしたっけ?わたしの家は車を持っていないから縁がありません。」
「あたしの家は旦那が車持ってるけど、あたしは運転しないから関係ナシ!」
この人たちから引き出せる情報はこんなものかしら、気づけばもうカフェに来て2時間が過ぎようとしている。
「あらま大変、夕飯の準備の途中だったのよ!」
「私は買い物いかないと!ごめんなさいねそろそろお暇してもいいかしら?」
そそくさと帰り支度を始める5人。家庭のある主婦にとって夕方はスーパーで買い出ししたり子どもの世話をしながら夕飯を作ったりと忙しいのだろう。
「はい、ご協力ありがとうございました。最後にちょっとだけ、皆さんはずっと仲がいいんですか?」
「えぇ。私達はもう2年くらい仲がいいかしら、本当は西野さんを含めて6人で立ち話したりしていたんですよ。もうみんなおしゃべり大好きだから!ワハハッ!」
「あれ不思議よね~、わたくし子供の頃母親の立ち話が長くてイヤだと思っていたのに、自分が大人になったら同じことしてるのよね。」
「分かるわー!おしゃべりし始めたら時間なんてあっという間なの!」
「ちょっと皆さん、早く帰らないと!ジャーナリストの川島田さん、ごちそうさまでした。」
主婦たちはアタシに軽く礼をすると、台風のように騒ぎながらバタバタと立ち去っていった。おしゃべり5人組が帰るとカフェの中がシーンと静まり返った、今更気付いたけどかなり落ち着いたお店だったのね。
アタシは雅樹くんに報告の電話を入れる。
『どうでしたかのり子さん?収穫ありました?』
「井戸端大会議って感じだったけど、おかげで大体の流れは読めたわ。なぜ犯人がわざわざ西野さんの家に狙いを定めたかも含めてね。でもこういう類の事件って本人たちに自覚がないのが、一番怖いポイントかもしれないわね。」
『例の違和感を感じたポイントも?』
「えぇバッチリ、答え合わせできたわ。」
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。