20章 ウワサ話にご用心 -3
私は早速事務所のパソコンの電源を入れ、ニュースサイトを開く。やはり強盗殺人事件の犯人が捕まったというセンセーショナルな話題だからか、今日もその報道真っ最中だ。私の後ろにのり子先輩が来たので椅子を譲ろうとしたが、そのままでいいわと断られた。
昨日とは別のメディアが報道しているのか、今日は女性キャスターがマイクを右手に、資料を左手に持ちカメラに向かって話している。
『えー犯人の動機はやはり金目当てだそうです!どうやら被害者宅には地下室があり、犯人はそこを漁って現金を手に入れたあと、一つしかない出入り口から地下室を出ようとして被害者女性と鉢合わせ。騒がれそうになったため侵入に使ったハンマーで撲殺したということです。なお、被害者女性の傷あとと犯人の証言したハンマーの形は一致しており、警察ではこれを殺人の物的証拠として現場検証などのさらなる捜査を進めています。』
おおかたの予想通り、やはり金品目的であることは間違いなさそうだ。しかしのり子先輩はなおも不思議そうだ。
「でも確かに変よねぇ、お金持ちの家なら他にもあるのに。たまたま留守だったから狙われたのかしらね?」
ニュースキャスターが続けて資料を読み上げる。
『犯人の供述によると、被害者宅の住人が全員出払ったのを確認して裏口から侵入。音が出ない細工をしてから窓を割って家の中へ入り、地下室へ。そして現金を手に入れたところで出かけたはずの被害者女性が家に戻ってきており、騒がれそうになったので犯行に及んだということです。警察の調べではこのとき洗面所に被害者女性のスマートフォンが落ちており、どうやら女性はスマートフォンの忘れ物に気づいて引き返したところで強盗犯と運悪く鉢合わせてしまったようです。』
なるほど、きちんと留守であることは確認の上で犯行に及んだが、想定外に被害者の節子さんが自宅に帰ってきてしまったのね。
『犯人はどうやら2ヶ月前に自動車整備の仕事をクビになっており、金に困っていた模様です。犯人には妻子がいたがそのことを言い出せず、生活費などを工面するために犯行に及んだということです。警察は他にも余罪がないかなどを引き続き捜査するということです。』
「うーん同情しないこともないけど、だからって人様の物を盗み、ましてや人を殺していい理由にはならないわよねぇ。」
のり子先輩は呆れ顔だ。生活費に困った男が留守の家に目を付け、そこに運悪く家主が鉢合わせして殺されてしまった…そういうことだろう。
映像では犯人の元同僚だという男性が、胸元だけの状態でインタビューに答えていた。
『自分は数ヶ月前まで一緒の工場で働いていたんですが、まさか殺人犯とはねぇ。彼がクビになった理由?担当部署が違うので自分も聞いた話ですが、彼けっこう素行が悪かったみたいですね。後から入ってきた派遣社員をパシリのようにこき使っていたみたいで、それが会社側にバレて解雇になったらしいんですけどね、これがまた結構泥沼でね。そのいじめられた派遣社員の所属する会社が訴えるなんて話もあったみたいで、訴訟を取り下げたければ300万円の示談金を用意しろと迫られていたとか。あくまでウワサなんですけどね、やっぱり金に困ってたんじゃないかなぁ。』
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