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何でも屋 H・M・Oの依頼簿  作者: ゆうき
19章 花火大会と恋の予感
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19章 花火大会と恋の予感 -19

 「のり子さん、正直に答えてください。ズバリ好きなんですか、そのカズヤって人のこと。」

 単刀直入な雅樹先輩の質問、ついに核心を突くときだ!私もドキドキしながらのり子先輩の顔を見つめる。一方のり子先輩はちょっと答えあぐねているようだ。

 「…分からないわ。」

 「え!だってデートまでしたんでしょ?!」

 「これが学生時代なら軽い気持ちで好き好き言ってたかもしれないわよ?だけどアタシだってもうアラサーなの、こういうことには慎重になる年齢よ。ただカズヤくんは悪い人じゃないと思う。」

 オトナの恋愛って難しいのだろうか。私にはまだまだわからない。

 「そもそも花火大会はどうだったんですか?二人で花火を見上げながら熱く語らって、なんなら"キミの横顔のほうがキレイだよ"なんて言われたりしたんじゃないんですか?」

 冗談だろうが、冷やかし半分に突っ込む雅樹先輩。彼女へ対しこんなことを気軽に言えるのも雅樹先輩くらいなものであろう。

 「アンタねぇ、ロマンス映画の見すぎよ。かき氷だけ買って大人しく盆踊りや花火を見ていただけよ。ほら写真に写っていたアタシ達が立っていた場所、ちょっと小高い丘みたくなっていたでしょ?だから見上げれば花火が見えるし、視線を下げれば祭りの風景が見渡せたしで、一石二鳥の場所だったのよ。ただ合コンの時点で彼はあんまりおしゃべりなタイプじゃないって分かっていたから、アタシから話しかけるのも控えめにしたわ。うるさい女だと思われて嫌われたくないからね。」

 のり子先輩って、意外と乙女心が強いのかも。普段そんな素振りを見せないから、余計そう見えてしまうだけだろうか。

 「ただ…」

 そこまで言って口をつぐんでしまうのり子先輩。どうしたんだろう、顔が赤い。

 「なんですか、そこまで言ったならもう言っちゃいましょう!ね!」

 「かき氷をお互い違う味を頼んだのよ。カズヤ君はグリーンアップル、私がパイン。それでちょっとお互いのかき氷を…その…。」

 「ま、まさか!のり子さんかき氷で、カップルがお互いのスプーンで相手に食べさせる、アーンってやつをやったんですか!?」

 目を真ん丸にして前のめりになり、食い気味に聞く雅樹先輩。しかしその気持ちは痛いほど分かる、私だって同じくらいの熱量でのり子先輩の話を聞いているのだから。

 「そうよ!悪い?もう、大のオトナがこんなことで恥ずかしがるなんて、アタシどうしちゃったのかしらね。合コンで罰ゲームするときに相手に食べさせるなんてよくあるから、慣れていたつもりなのに。」

 照れ隠しなのか、さっと空いたカップを手にキッチンの方へ歩くのり子先輩。

 「(こりゃのり子さん、本気だね。)」

 ヒソヒソと私に耳打ちしてくる雅樹先輩。それにしても私の中でかっこいい女というイメージだったのり子先輩が、こんなに動揺するなんて。やはり恋は人を変えるということか。


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 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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