19章 花火大会と恋の予感 -15
「で、結局好きになったポイントは?」
「そんなの私の口からは言えないわよ、恥ずかしいもの。でもね、その代わりと言えるか分からないけど、あの合コンの後にめちゃくちゃキュンとしたことがあったのよねぇ。もうアタシもアラサーだし、何でも屋としていろんなことを経験してきたから大したことじゃ驚かないんだけど、そんなアタシの心が確実に揺れたのはあのときね。」
なんだろう、随分含みをもたせた言い方をする。
「えっなになに?もったいぶらないで教えて下さいッ!」
「仕方ないわね~、そんなに知りたいなら話してあげるわ。」
なんだかちょっと嬉しそうである、本当は聞いてほしかったのだろう。しかし私と雅樹先輩もぜひ聞きたいのでお互いの狙いは見事に一致している。
「美羽ちゃん、怒らないでね。あのあと美羽ちゃんを家に返したあと、男性陣はカラオケで2次会したって言ったわよね?実はね、アタシとアイさんとミユさんも参加していたの。」
「えっずるい!私だって行きたかったのに!」
「そういう反応になるのが分かりきってたから、みんなで口裏合わせて黙っていたのよ。ごめんなさいね。でも美羽ちゃんは法律的にもまだまだ夜遊びがダメな年齢なのよ?だからアタシがいじわるしたわけじゃなくてルールの問題なの。ま、あと2年の辛抱ね。」
「しょうがないよ美羽ちゃん、こればっかりは。国が定めていることだからね。」
「はい。」
成人式は18歳になったのにまだまだ酒もタバコもだめだし、20歳未満は未だ22時以降に出歩いていると補導なのである。ちょっと納得いかないが、それをのり子先輩にぶつけても解決しないことはさすがの私も分かっているつもりだ。
「それはさておき、カラオケへ合流したの。相変わらずアイさんとミユさんはツバサさんの取り合いをしていたわ。当然のように私はユウヤさん・カズヤくんたちと3人で飲んだり歌ったりし始めた。さすがにツバサさんもアイさんとミユさんが鬱陶しくなったのか、トイレに行くふりして途中で帰ったのよ。それでツバサさんが帰ったことにしばらくしてから気づいたアイさんとミユさんも帰って、残ったのはアタシ達3人になった。」
「深夜のカラオケの個室で男二人と女一人なんて、ずいぶん無防備じゃないですかのり子さん。」
「アタシもそう思ったんだけどね、深夜だったし始発までの数時間過ごせればいいやくらいに思ったのよ。それでね、ユウヤさんがせっかくだから酒をもっと飲もうって言い出したの。」
「危険危険!そういうのが一番危ないんですよのり子さん!たまにニュースでもやるじゃないですか、泥酔して意識のない女性が被害にあうヤツ。」
「うるさいわね、黙って聞きなさいよ。まぁアタシは基本的にお酒は強いから、望むところよって感じで勝負を受けたの。ユウヤさんは散々歌って体力を消耗したところに合コンのときから結構飲んでいたから、すでにホロ酔い状態で負ける気がしなかったし。で、3人が一曲ずつ歌い終わったらユウヤさんとアタシがお酒を一杯飲むってルールで始めたの。もちろん先に潰れたほうが負け、罰としてカラオケのお会計は全額負担を賭けてね。」
※作中でも雅樹くんが警告していますが、くれぐれも皆さんは真似しないように。
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




