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何でも屋 H・M・Oの依頼簿  作者: ゆうき
19章 花火大会と恋の予感
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19章 花火大会と恋の予感 -6

 しかし人混みの人口密度が高すぎてなかなか所長に近づけない。彼がやたら背が高いおかげで見失わないのが幸いか。

 「あ、見えた!」

 後ろ姿だがだいぶ近寄ることに成功した。所長は白いTシャツとデニムに黒のスニーカーという至って普通の格好だ。隣にいる女性は赤めの花がらの着物を身に着けている。

 「あれを着るなんて自分に自信があるタイプの女と見た!それから経済的にも余裕がないとレンタル料もそこそこかかるし。」

 ここで転機が訪れた。所長とその女性はどうやら冷やしきゅうりを買うらしく屋台の列に並び始めたのだ。今まで背中しか見えていなかった私たちからは横顔が見える位置となる。

 「あの人はのり子先輩じゃないです、背格好は似ているけど。」

 「ふーん、でもハーフっぽい顔立ちでかなりの美人じゃない?お兄ちゃんに聞いてみよーっと!」

 私のすぐ横で妹さんが電話を始める。距離はかなり近いため私の声が聞こえたら気づかれそうだ。


 電話を切った美羽さん。

 「なーんだ、ただ花火大会に同行してくれっていう依頼なんですって。お兄ちゃんの話ではあの所長さん、毎年夏になると女性からお祭りやらバーベキューやらに誘われるらしいの。オレなんて暑い中店番の依頼ばっかりなのにって怒ってました!」

 でもそれは仕事だから仕方ないのでは…?私は所長の横にいるのがただの依頼人と知ってなんだかすごく納得した。よく見れば女性の方から話しかけてはいるが、所長はずっと無愛想だからである。

 「せっかくイケメンなのにちっとも笑わないんですね美羽さんの上司って。まぁそれがクールでかっこいいって人もいるんでしょうけど。それより写真いっぱい撮らなきゃ!」

 目の前の美男美女が恋人ではなくビジネスの関係と知って急に興味を失ったのか、お神輿や盆踊りの風景を撮影し始める妹さん。人混みの中で撮影することを想定していたのだろう、自撮り棒を取り出し慣れた手つきでスマホに付け頭上に掲げて撮影し始めた。私は写真や動画に収めるクセがないため、風景や食事をSNSに残す人の気持がイマイチ分からず、妹さんに聞いてみた。

 「えっなんのために撮ってるのかって?あたしは思い出を残すためかなぁ、あとで見返した時にこんなことあったなって懐かしむことができるでしょ?ホラ人間って忘れっぽいじゃないですか?でも写真が1枚でもあればそれを手がかりにいろんなこと思い出せるから。美羽さんも撮っておいたら?」

 たしかに彼女が撮り終わるまで暇だし、私もせっかくなので数枚ほど撮影しておいた。盆踊り、屋台、行き交う人々、おみくじ、提灯に彩られた町並み、それから妹さんとのツーショット…。

 そうしている内に花火が始まる時間になろうとしていた。私たちは雅樹先輩の分もあわせてかき氷を3つ買い、元の公園へ引き返した。


 このとき撮った写真が、後にあの人の恋心を証明することになるなんて、このときの私は全く予期していなかった。

 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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