5章 運動の秋・食欲の秋・恋愛の秋!?-5
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/5 17:00
結局、依頼人である華美チヒロはまだ事務所に現れなかった。というのも『17時で定時退社』なのでどんなに早くてもそこから30分、残業したとすれば18時過ぎてしまう。それを聞いてのり子はまた明日聞かせてね~と看板をCLOSEに翻し帰ってしまった。というのも白川ゆりとお茶する約束をしており、のり子としても待ちたいが帰らないといけない状況だったわけである。
「今日はオレが戸締りまでやりますから、忠司さんも帰って大丈夫ですよ!」
ルックス的に天敵になりそうな忠司も追い払おうとしたのが、当の忠司は涼しい顔してまだ書類入力が終わっていないからとあしらった。まぁ雅樹が目に見えて不機嫌になったので、依頼人が来たときは奥に引っ込むから心配するなとなだめたのだが。
それに忠司にはある推理があった、帰らなかったのはそれを確認するためでもある。
---そしてついに訪れた、17:30。
ピンポーン、と事務所のインターホンが鳴る。すでにCLOSEの札がかかる事務所のインターホンがなるこの場合の可能性は3択。
1.宅配業者の場合。しかし最近ではお届け前に連絡する業者が多いためそれがない以上違う。
2.佐野警部の場合。だが相談に行くという事前連絡がなかったためこれも却下。
3.依頼人 華美チヒロさん。
素早く忠司が奥に引っ込むと、雅樹がちょっと咳ばらいをしてから今開けますよといつにないキメた声で返事しドアへ向かう。きらきらの顔でドアを開けたその先には…。
「 男 !?」
忠司は奥で(やっぱりな)と思った。そう、華美チヒロという名の男性だったのである!
忠司の推理はこうだった。雅樹から見せてもらったメールにも、雅樹とのり子の会話にも性別の話題は出ていなかった。それに最近では"ツバサ"や"カオル"など、男女どちらとも取れる名前が増えている。さらにメールには『一人でラーメン屋』と書いてあった、女性なら飲食店でもファミレスや女子ウケのいいおしゃれな店名を出すだろう。それらの状況から一人密かにこの推理を組み立て、盛り上がるのり子と雅樹を観察していたというわけである。
げんなりする雅樹とは対照的に、チヒロさんは一緒にジョギングしてくれる相手が見つかって嬉しそうだ。一人でラーメン屋もためらうくらいだから、誰かが一緒に運動してくれるというのは相当心強いのだろう。
雅樹は呆然としながらもなんとか自我を保ち、チヒロの体型・体質が改善されるまで週2回月曜日と木曜日の朝9時から一緒に公園をジョギングするという契約を行った。場所は同じコースでは飽きるということで毎回変わるらしい。
雅樹だけ秋を通り越して冬の到来という表情なのだった。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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