5章 運動の秋・食欲の秋・恋愛の秋!?-4
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/5 9:00
朝から雅樹がソワソワしている。コーヒーもいつもはのり子が自分のを淹れるついでに他二人の分も用意してあげるのだが、今日は雅樹が淹れてくれる。なんならしつこくもう一杯どうですか?としつこく聞いてくる、カップにまだコーヒーが半分以上残っているのに。
「例の依頼人が来るのは夕方なんでしょ?楽しみなのは分かるけど、少しは落ち着きなさいよ。」
のり子が諫めても雅樹のニヤニヤは止まらない。さらにいつもは私服のくせにバッチリスーツでキメているし、しきりに手鏡を片手にワックスで固めた前髪を右にしてみたり左にしてみたりと触りまくっている。ちなみに手鏡はのり子のもので、のり子が事務所に来ると同時に借りたのだ。
「いやー秋ってだんだん気温も下がって人肌恋しくなる季節ですよね!でもオレには春が訪れる、それが今日…。麗しい華美さんの手を取って『僕が諏訪野雅樹です、末永くよろしくお願いします』なんて言っちゃったりして。ニャハー!」
一人で盛り上がる雅樹。
「バカだな。」
そんな雅樹を冷ややかな目でちらりと見、パソコンでデイリーニュースのチェックを行う。食い逃げや万引きなどの軽犯罪から放火や殺人などの重罪まで、今日も全国の大小さまざまなニュースが表示されている。
「大体まだ顔写真も交換してないのに気が早いんじゃないの?それに雅樹くん、あのメールを思い出して。『好きな人にアプローチ』って書いてあったということは、その華美さんには気になってる相手が既にいるのよ?」
しかしそんなのり子のツッコミなど今の雅樹には通じない。
「大丈夫ッス!前にも宣言したとおり、今日のバッチリスーツ姿で第一印象をガッチリつかみ、華美さんの心をオレに振り向かせる。これが男版シンデレラストーリーっやつですね。秋だけど春、春だけど秋!」
もはや二人のことなどお構いなし。そんな雅樹の様子にのり子が春といえば、と自分のスマホを取り出した。
「白川さんから昨日、彼氏ができたと連絡があったわよ。」
と事務所メンバーに報告する。忠司が反応するが、それは恋バナにではなかった。
「なんだ川島田、まだ連絡してたのか。」
そうよ、とのり子は返す。どうやら星野姉妹とも引き続き連絡を取っているようである。
のり子の報告によると白川ゆりさんはあの後、流行のマッチングアプリで知り合った人と数回食事に行ったらしい。最初はゆりも遊び目的では?と警戒していたそうだが、3回とも至極真面目なデートで交際も真摯に申し込んできてくれたということだ。もちろんのり子はイイ人いたらアタシにも紹介してね!と返すのを忘れなかったが。
そしてそんな話を聞きながらじゃあ次はオレっすね~!と、さらに上機嫌な雅樹なのであった。
※10/20は公式企画の手紙短編を出すので次話は10/21です。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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