番外編 合コンの女王 1
「えっ、美羽ちゃん合コンしてみたいの?」
依頼から帰ってきた川島田さんへ所長が相談したみたいだ。しかし私も合コンというものは一度行ってみたいと思っていた、これは俗にいう渡りに船というものであろう。ソファー席で新しいデザインになったチラシを発注する印刷所を調べていた私の隣に彼女は座る。
「はい、ぜひ行ってみたいです!所長さんの話では合コンの数合わせっていう依頼もあるみたいですし、後学のためにもお願いします。」
「そうねぇ、まぁ美羽ちゃんも18歳になって今の法律ではもう成人扱いなわけだし、一緒に行きましょうか?ただしお酒は飲んじゃダメよ。(※現行の法律では未だに飲酒は20歳~。)」
「分かってます。やった!」
「でも美羽ちゃん、どうしてそんなに合コンへ行ってみたいの?」
「私の中で、合コンってなんか大人の遊びって感じがするんですよね!それにドラマや漫画でよく合コンのシーンが出てくるけど、一回も行ったことないからそういうシーンを見てもリアリティが沸かなくて。」
「でもね美羽ちゃん。合コンって基本的に初対面同士の人が楽しく食事やテーブルゲームして盛り上がって交友関係を広げたりする場なのよ?つまり人間嫌いなあなたが積極的に行く場ではないってこと。」
あ…。私は合コンという場に憧れすぎて、合コンがなんぞやという点をすっかり見落としていた。そうだ、そもそもコミュニケーションが苦手な私には地獄じゃないか。初対面の人を観察するのは好きだけれど、会話をするとなれば話は別である。
「やっぱり美羽ちゃんってまだまだ若いわね、一つのことに夢中になると他を見落とす。まぁアタシにもそういう時代があったから人のこと言えないけどね。でも良いわ、いい機会だから連れて行ってあげる。」
「えぇ!?でも私、川島田さんみたいに知見が広いわけじゃないし、世間知らずですし。初めてお会いする人たちとうまく過ごせるかとっても不安なんですけど。」
「大丈夫よ、アタシが一緒に行ってあげるから。これも新人研修の一環としていいかもしれないわね。しかもアタシ、ちょうどさっき合コンのお誘いもらってきたのよ。いつもペットのお散歩代行へお邪魔しているお宅のお嬢さんにね、最近彼氏ができたんだって。ただ合コンを前から企画していたらしくて人も集めた上に店も予約しちゃってるみたいで、今更キャンセルできないでしょう?だから困っているそうなの。ちょうどいいから美羽ちゃん、一緒に行くわよ。」
な、なんて都合のいいタイミングにお誘いをもらってくるんだこの人は。しかしラッキーかもしれない、人生初合コンだからとても緊張するが、この川島田先輩が一緒に行ってくれるなら心強いことこの上ない。
「でも心得ておいて?美羽ちゃんももう成人したんだから、自分の身は自分で守るのよ?」
「はぁ…どういうことですか?」
「悪い男に捕まらないようにするのよ、結局どんな男と付き合うかを決めるのは美羽ちゃん本人ですからね。それから帰宅するタイミングも自分で決めて行動しなきゃいけないし、しつこく酔っぱらいにダル絡みされたときなんかも自分の意志できっぱり断る強い気持ちが必要よ。先に忠告したからね。」
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