5章 運動の秋・食欲の秋・恋愛の秋!?-1
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/3 10:30
すっかり朝も涼しくなってきた10月最初の月曜日。忠司が10時に依頼人の元へ出発したため現在事務所にはのり子と雅樹の2人である。
「いいなー忠司さん。またデートの依頼ッスか~。」
朝から不貞腐れている雅樹のつぶやきを、10月の来所者名簿を作りながらのり子が拾う。
「9月末…28日だったかしら?にハウスクリーニングの依頼へアタシと八重島さんで行ったでしょ?あそこのマダムが『ジム通いしたいのだけど緊張しちゃうし、一人ではどうも行きにくいのよ。報酬は弾むので、八重島さんご一緒お願いできないかしら?』ってハウスクリーニングが終わる頃に頼んできたのよね~。ま、ホストの同伴出勤のスポーツジムバージョンってところかしら?歳下にも歳上にもモテモテよね八重島さんは。」
10月分の来所者名簿を作ると、そのまま9月分を書類棚に保管しに歩くのり子。一方天井をボケーと見ながら雅樹はまだ不機嫌である。
「なんスか、そういうデートまがいの依頼とか彼氏のフリとか合コンの人数合わせとか、全部忠司さんなんてズルすぎ…世の中顔か!」
のり子はそうねーそれが現実だし、と軽く返事しながらさらに追い打ちをかける。
「でも仕方ないわよ、私も雅樹くんもジム行ってないんだから。スポーツジムに詳しい方にお願いしたいわって言われたら問答無用でその依頼は八重島さん行きなんですもの。悔しかったら雅樹くんもジム通ったら?同じような依頼来たら斡旋できるわよ、ただしジム費用は自腹よ?」
ぬぬぬ…と悔しそうな雅樹の表情。
「それより暇ならチラシ配りするわよ~、涼しくなってきたしちょうどいい季節ね。」
忠司が印刷してくれたチラシを用意しながらのり子が言うと、雅樹がふっふっふっと不敵にほほ笑む。何よ気持ち悪いわね、とのり子が言うと雅樹は自分スマホ片手に声色高らかにこう言った。
「じゃーん、なんとオレ今メッセージでやりとりしてる、イイ感じの人がいるんですよね!」
これにはのり子もびっくりである。
「あら何よ、滝美野さんや白川さんに食いついておいて本命がいたってことかしら?」
「違うんですよ、メッセージが始まったのは先週なんです。」
実は前述のハウスクリーニングの日、模様替えもしたいということで力仕事役に忠司と掃除役にのり子の二人が出向いたため、雅樹は事務所でお留守番をしていた。そのとき宣伝チラシに記載しているお問い合わせアドレスに来た、ちょっとしたお悩み相談に答えていたら仲良くなったというのである。もちろんまだ会ったことはないが、お留守番しているときにその依頼者からのメールだけを雅樹自身のアドレスへ転送されるよう設定していたというわけである。
「呆れた…あんたそれ一般企業でやったら大問題よ?うちはまぁ、そのお悩み相談を雅樹くんが引き受けたってことにしておけばセーフだけど。」
まったくもうという表情を出すのり子とは反対に、まぁまぁ良いから良いからと相変わらず調子のいい雅樹である。
※当然、会社あてに来たメールを個人のアドレスに転送することは基本的にどの会社でもアウトだと思います。良い大人の皆さんは決してマネしないように、フィクション作品だからできることです。
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