18章 浮つく気持ちと黒い嘘 -7
私は採用当日早々にひと仕事終え、ソファーのところに戻るよう言われたので座ると作業着の方の男性が話しかけてきた。
「あの人イジワルでしょ?本当は美羽ちゃんの名前もオレらの話聞いて事前に知っていたし、今日来ることも知ってるはずなのに。18歳の女の子って聞いてたら見りゃ分かるよね~。」
その声が聞こえていたのか、パソコン席の方から返事が聞こえてくる。
「だからといって本人かどうかは、自己紹介してもらうまで分からない。万が一に似た特徴を持つ別人ということもあるからな。それより雅樹は経費計上終わったのか?」
「へいへい、今やりますよ。元刑事さんはお硬いことで。」
あの奇抜なファッションセンスの人、元刑事なんだ。私が驚いていると今度は女性の方が話しかけてくる。
「ねぇ美羽ちゃん、今夜暇?歓迎会やりましょうよ、もちろんあなたの叔父さんのバーで!」
「さんせーーい!オレ、行っきまーーす!」
「アンタはどうせ女性客目当てでしょ、まぁいいけど。美羽ちゃんの歓迎会だってことを忘れないでね。」
「あ、でも法律が変わって18歳から成人扱いになりましたけど、20歳以降は22時以降出歩いていると相変わらず補導なのでは?それと関連してるかは知りませんけど、お酒やタバコも未だに20歳からなんですよね?」
「お、粗絹さんはよく知っているな。そういうことだから、歓迎会するのはいいけど早めに帰してやれよ。」
あの人だけ"さん付け"で呼んでくる、初対面だから仕方ないのかもしれない。むしろ美羽ちゃん呼びしてくる他2人がフレンドリーと見るべきかしら…その呼び方オッケーしたのは他ならぬ私だけどね。
「帰してやれよ?なんだかよそよそしい言い方ね。ってことは八重島さんは来ないの?」
「俺はこのあと夜9時まで仕事帰りのOLさんにジムでのパーソナルトレーニングを頼まれているから行けないぞ。」
川島田さんによると、彼はそのルックスから特に女性の依頼客が直接指名することも多いらしい。金持ちのマダム数人から気に入られていて、頻繁にトレーニング指導と称する実質デートのようなことも多いのだとか。本人は気にしていないらしいけど。
「チェッ、世の中結局顔なんだよ。」
その話を聞いて作業着の男性…諏訪野さんは明らかに不機嫌そうにしている。彼も別にブサイクってわけではなく、むしろ童顔で愛嬌のあるタイプである。いわゆる犬顔男子という感じか。それでも長身痩躯のイケメン所長と並んでしまうのは分が悪そうだ。同じ事務所にいる男性同士ということで比べられることも多いのだろう。
そこでハッとなった。もし私がお客様を相手にすることになったら、目の前にいるこの美女と比べられるのだろうか。田舎娘のような私の出で立ちでは、この人相手に勝ち目はない。そんな私の思いを察したのか川島田さんが話しかけてくる。
「美羽ちゃんは大丈夫よ、アタシとタイプが違うから。そんなことより八重島さんは来られないけど、3人で歓迎会しましょ!アタシと雅樹くんはそのままバーに行ける近くのお店でね。」
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




