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何でも屋 H・M・Oの依頼簿  作者: ゆうき
18章 浮つく気持ちと黒い嘘
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18章 浮つく気持ちと黒い嘘 -2

 その後も小学校・中学校・高校と進学したが、成長しても人は嘘を言うものだ。しかも私は小学校の頃には既に人間不信になっていて、もうクラスメイトとは必要最低限の会話をするだけになっていた。可能な限り愛想よく、また挨拶だけは忘れないようにしていたため辛うじてイジメられることはなかったが、いつもクラスで私だけが浮いていた。でもそれでよかった、仲良くなってから嘘をつかれる方が辛いから。

 一応お母さんを始め家族はこのことを知ってくれてはいる。だから高校卒業後、何もせず私が家にいても何も言わない。心配してくれているのも分かっているのだけど、それ以上に私は人と言うものを信用できない。


 …嫌なことを思い出してしまった。今はもらったチラシを片手に何でも屋さんという事務所へ歩いているところだ。きっと叔父さんはもし可能ならそこで働けとでもいうのだろう、私の同級生たちも高校卒業後は大学や専門学校へ進学するかそのままどこかの会社にみんな就職した。進学も就職もしなかったのは私だけなのだ。


 都内は人が多い、特に駅やその周辺は昼も夜もみんなどこへ行くのだろうと不思議になるほどの人だかりだ。雨の日でもさまざまな年齢・性別・国籍の人が行き交う。路上ライブする若者や、政治や宗教の演説なども見慣れてしまった。

 私は人間不信だけど、こういう人だかりは別に嫌いではない。というかむしろ、子連れの家族の会話に耳を傾けたり、道行く人の服装などを観察するほうが好きだ。きっと赤の他人だからこそ気楽なのかもしれない。誰がどんな嘘をついていようが、私に全く無関係な相手であればただの観察対象で終わるからだ。


 新入社員だろうか、若い人がスーツを来て一生懸命歩いているのを見ると複雑な気持ちになる。昔は私もあぁいう風に、きっといつかはみんなと同じように普通に働く大人になるのかなと思っていた時期もあったから。

 ま、例え今から訪ねる何でも屋さんが採用面接をする気だとしても、私のような根暗で変な女はすぐ落とすだろう。私服だし。それならそれでいい、叔父さんに落ちたから帰ってきたと言い返す大義名分ができるからだ。




 いろいろ考えながら歩いていたら、着いた。


 インターホンを押す…ピンポーンとなり、女性の声でどうぞ!と聞こえてきた。私はドアをガチャリと開けて入ると、目の前に一人の女性が立っていた。パンツルックのスーツを来て、ハイヒールを履いている。第一印象はとても綺麗な女性だと思った。凛とした意思の強さを感じさせる目鼻立ちに黒いロングヘアが似合っているが、笑うとすごくチャーミングで、同じ女性の私でもそのギャップにドキリとする。

 「いらっしゃい、素絹さんでしょ?話は聞いているわ、とりあえずここに名前を書いてあそこのソファに座ってね。」

 言われるがまま来所者名簿というものにサインをする。これって本人の直筆だから、何かあったときに筆跡鑑定に出せちゃったりするのかな。

 余計なことを考えているとお茶の良い匂いが漂ってきた。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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