17章 アタシの、煙に巻かれた、記憶。 ~Memory Memory~ -25
「彼ね、すっごい真面目な人なの。趣味はゴルフで、仕事の接待にも役に立つからって、休日はいつも近くの打ちっぱなしに練習に行ってるのよ。それに中国語とフランス語も勉強中でね、あのパソコンだけが置いてある隠し部屋あったでしょ?あそこは彼の勉強部屋なのよ。本棚と壁に囲まれて雑音がシャットアウトされるし、狭い方が集中できるんですって。」
「えぇー素敵、なんていうか大人の男って感じ。男の人って成人してもロボットのプラモデルが好きだったり、車に入れ込んだりするイメージだけど、山神さんの旦那さんは勤勉な方なんですね。やっぱり結婚するなら真面目な人がいいですよね。」
「いえ、彼も結構子どもっぽいところがあるのよ。ホラ前に彼の好物は私の作るオムライスだって言ったでしょ?その他にもあの人ね、カレー・エビフライ・ハンバーグ・それから甘いデザートが大好きなの。それから大人になっても炭酸ジュースが好きでね、血糖値を気にして一日一本にしてるみたいなんだけど。」
「へぇー、なんだかラインナップだけを聞いたらお子様ランチのメニューみたい。なんだかそういうギャップってかわいく感じますよね。」
「のり子ちゃんは料理の得意メニューあるの?よかったら前に一緒にオムライス作ったみたいに、またお料理しない?いつも食べてくれるのはあの人ばっかりでしょ、たまには違う人に食べてもらって感想聞いたりしたいのよ。その方が料理のモチベーションも上がるっていうか。」
「やった、是非教えて下さい!あ…それじゃお弁当について教えてもらおうかな。アタシお弁当の彩りとかバランス考えるの苦手だから。それに山神さんもいつも銀行でお弁当ですけど、旦那さんの分も作ってるんですか?」
「そうよ。たまに私が寝坊しちゃって作れない日があるんだけど、そうするとすごくガッカリして出勤するのよ。コンビニ弁当や外食だと高くつくし、何よりキミが作った弁当が一番おいしいんだって…この前照れくさそうに言ってくれたのが、すごく愛おしくて。」
「あ、山神さん顔赤くなってる~!いいなぁ結婚してもラブラブでいられるなんて、何か秘訣があるんですか?」
「彼が私を愛してくれているから、その分私も彼を愛してる。それだけかな。」
「えっ、とっても素敵ー!ますますアタシの理想だな山神さん夫婦は。」
「そんな大げさなものじゃないわよ。ただ人間って、何かプレゼントをもらったらお返しするのがマナーでしょう?愛もきっとそんなものなのよ。自分が相手から受け取ったら、その分与えたくなるのよ。そしてあの人は私のことをずっと愛してくれる…そんな気がするの。あ、のり子ちゃんこの雑誌に載ってる3食バランス弁当なんてどう?彩りも良いし、野菜も結構入ってていいんじゃないかしら?」
「お弁当や和食は目で食べるっていうけど、やっぱり彩りって大切なんですね。ミニトマトの赤やブロッコリーの緑色も、こうして見ると食欲そそりますもんね。」
----- ----- -----
ガチャ。事務所の入り口ドアを回してみるが、まだ誰も来ていないようね。アタシは自分で鍵を開けると、そのまま足を踏み入れた。
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




