3章 小さな2人の依頼人-7
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/10/1 11:00
基本的に土日は依頼へ出向くことはあるが事務所は閉めている。そんなCLOSEの札がかかった事務所に星野ゆい・かなの姉妹とその両親の姿があった。父親の方は背が高くポロシャツにデニムパンツというラフな出で立ちだが、ポロシャツの胸元には男性用スポーツウェアをメインとした某高級ブランドロゴが小さくあしらわれていた。母親も涼しくなってきた秋の気候に合わせて落ち着いた色のワンピースに薄手のカーディガン、立ち振る舞いと話し方から漂う品の良さはどこかのお嬢様育ちだろうか?割と裕福な家庭のようである。
そんな4人を前に、のり子がなぞなぞの答えとおばあさんの真意を説明していく。私の予想ですけど、という前置きをしてからだったが星野一家はのり子の意見に誰も反論しなかった。
実は星野一家はおばあさんが旅行好きなことと、今でも旅行に行きたがっているのはみんな薄々分かっていたという。おばあさんがよく昔のアルバムを引き出しその写真を眺めていたり、姉妹に昔行った場所の話をよく聞かせていたからだ。だがやはり足腰のことが気になり連れ出すのに気が引けたことと、おばあさんがそれを負い目に私は良いからみんなで行っておいでなどと言い出しかねない。そうなっては余計に心苦しくなることから、家族の方からも誘いづらかったということだ。
改めて星野一家はおばあちゃんの真意を確認し、年末にでもおばあちゃんを連れてどこか旅行へ行こうかと家族会議で盛り上がっていた。そして一家で『お騒がせいたしました、ありがとうございました』と揃ってお辞儀をして去っていった。
星野一家を送り出し、雅樹が調子よくのり子に声をかける。
「のり子さんやりますね、なぞなぞから家族の悩み解決に一役買うなんて!さっすがのり子先輩だな~。」
しかしのり子はそんな雅樹の調子には乗らない。
「何言ってんのよ。元はと言えば雅樹くんが勝手にお菓子食べて始まって、結局私が解決したんだからこれは立派な貸しですからね。アタシからの頼み事、なんでも聞いてもらうわよ。」
「菓子だけに?」
雅樹のくだらないギャグを、忠司とのり子はため息で受け流した。
後日、星野一家から封書が届いた。そこにはおばあさんと一家で旅行に行くことと、改めて一家からの感謝の気持ちがつづられていた。そしてなぞなぞ一件には良い意味で見合わない金額の小切手も同封されていた。やはり"この姉妹、良いトコの娘たちなのでは?"というのり子の勘は正しかったようである。
「"ゆい"ちゃんと"かな"ちゃんと一緒にいるとき、おばあさんはきっと"ゆかいな"気持ちになれているのよね。」のり子は手紙を読みながら、少し笑って呟いた。
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22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)