16章 謎の女-34
12:55 ジャパングランドホテル3階 第六宴会場
結果発表5分前、ポイントバトル参加者たちは結果を聞くため集合していた。前日ホテル前でポイントバトル参加者に説明をしていたときより3割ほど少なく感じるが、結果は聞くまでもないと諦めて帰ったのか一般客に混じって他の大宴会場で遊んでいる者たちがいるのだろう。
雅樹はここへ来る前ミヤビが言っていたことを思い出していた。それは雅樹が、せめてミヤビと事故の関係を教えてくれと言ったことに対する返答だった。
『もう気づいているかもしれないけど、僕と被害者の女性は恋人同士だったんです。その証拠に彼女の名前を教えましょう。彼女は天草カレン、年齢は事故当日25歳でした。彼女の名前をはじめとした個人情報は、ご遺族の希望で報道されなかったはずですよね?彼女は某自動車メーカーの営業担当をしていたのですが、このホテル前で彼女を轢き殺した車が皮肉にも彼女が勤めているメーカーのものだったんです…。印象が悪すぎるでしょう?会社側からの希望もあって彼女の情報は一切の公表をされることなく伏せられたんだ。ここまで話せば僕と彼女が交際していたことを信じてもらえますか?おっとそろそろ結果発表に向かわないと、お昼を食べてるの忘れてしまいましたね。』
ミヤビの答えを聞いても雅樹は特に驚かなかった。もうほかの人達はすっかり花を手向けたりしなくなった1年も前の事故だ、まして被害者の情報はほぼ報道されなかった。となればそのような事件に未だにこだわってるのはミヤビさんが被害者の身内か恋人か親友か、もしくは事故関係者と浅からぬ仲に他ならない。そう予測していたからである。
そして彼の言動からして、恐らく…。
ホテルのオーナーや剛金などのありがたい話を聞いて、形式上の表彰。結局雅樹は3位で、ネットショッピングで使えるポイント3万円分を受け取った。
どうせミヤビさんが優勝だろうと思っていると、ミヤビは2位。実はもう1人プロゲーマーが混じっていたらしく、そちらにトップを譲る形にった。ポイント内訳を見せてもらうと、恋愛シミュレーションゲームのポイントがかなり低くそこで差を付けられてしまったらしい。
当のミヤビ本人は予想済みだったようだが。
「言ったでしょう?僕は女性との駆け引きは苦手だって。カレンとしかまともに交際経験はないし、なんなら学生時代女子のクラスメート達とはほとんど会話せず卒業したくらいでしたからね。」
そんな昔話をしながら、しかしミヤビはずっと銀持剛金へ鋭い視線を向け続けていたのだった。
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




