16章 謎の女-33
ミヤビは続ける。
「ところで、雅樹さんはどうしてそんなに都市伝説について知りたがるんですか?まさか最近流行の心霊系動画配信者とか、マスコミ関係者ですか?」
そう問われ、雅樹はここに来るに至った経緯と自分の身分を伝えた。
「あーなるほど。つまりその女性の先輩に怒られないよう、ポイントゲームや情報収集を頑張っていると。」
依頼として受けてるわけでもないのになんだか仕事みたいだね、そう言って笑うミヤビに今度はこっちから質問を投げかけてみる。
さっき毎年ゲームイベントに来ていたと言っていたしもしかして去年の事故もなにか知っているんじゃないですか?花も手向けていたことからとてもあなたがあの事故と無関係だとは思えません、と。オレ達は警察じゃないですがなにか困っていることがあれば力になります、と付け加えて。
少し黙っていたミヤビだが、やがて窓の外に目をそらしながら口を開く。
「まぁね。むしろ警察に頼っても無駄なんだよ、警察はあの事件をすでに処理済みとしてしまっているからね。よほどのことがない限り再捜査などはされない。でも僕は真実が明るみに出るまでは戦い続けるつもりだよ…僕なりの方法でね。」
雅樹にはミヤビの言うことがよく分かる、それは同じく事務所で働く忠司が元警察関係者だからだ。警察というのは一度解決した事件を引っ掻き回されるのを嫌う傾向にある、特にそれがマスコミ関係者など部外者の人間ならなおさらだ。世間の人が思っている以上に外ヅラを気にしていたり検挙ノルマなどのしがらみで面倒くさい組織なんだよ、いつの日か忠司が遠い目をしながらそんなことを語っていたのを思い出した。
ミヤビの物言いからして、きっと女性の死亡事故はまだ皆が知らない何かがあるのだろうと雅樹は察した。その真実って何ですか?と聞いてみる。
「今はまだ言えない、物事には順番ってものがあるからね。だけど雅樹さんがあの事故に興味を持ってくれて調査してくれているのはとても嬉しく思います。無償でというのも申し訳ないし、どうでしょう?僕が正式にお金を払って依頼するというのは。」
都市伝説の調査を、依頼として?オレに解決できるか保証はありませんよと言う。窓の外に目をやったままミヤビは言う。
「僕が正式に依頼として出せば雅樹さん達はお金をもらっている手前、これまで以上にしっかり捜査をしてくれるはず。そして僕は、僕が握っている真実をあなた達に渡す。最終的にはアイツを…剛金を地獄に落としてやりたいんだ。必ず。」
表情こそ変えないがミヤビは膝の上で両方の拳を力いっぱい握っている。恐らく無意識にだろうが、そんな仕草から彼の強い意志が伝わってきた。
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