3章 小さな2人の依頼人-3
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/9/26 17:00
姉妹二人を連れて出てきたのり子は、事務所前の札をCLOSEにひっくり返すと歩き出した。小学生二人に歩くペースを合わせるのでいつもの1/3くらいのスピードである。
「でもあの紙だけじゃ、お姉さんたちも分からないわね。もうちょっとおばあさんのお話、聞かせてもらえるかな?」
歩きながらのり子が尋ねると、かなが答える。
「うーん、おばあちゃんは独特の言い回しが好きなんですよ。いつも口癖のように"あなたたち姉妹と一緒にいる時間はとても素敵な心持ちよ"って、フフフって笑うことなんです。」
それに続けてゆいも口を開く。
「"今の時代はホントに便利だねぇ"も口癖だよ!私たちと一緒にスマホやパソコンで簡単なゲームもするから、最近おばあちゃんとスマホでメッセージもするんです。こんな感じで。」
そういうと持っているスマホの画面を見せた。確かに、メッセージアプリで塾の終わる時間や学校のことなどをいつもメッセージし合っているようだ。
「へぇーちゃんと絵文字まで使いこなしてる。今時のおばあさんはハイテクね…。」
のり子は感心しつつも話題を戻す。
「他におばあさんやあのなぞなぞについて、気づいたことはあるかしら?」
ゆいが答える。
「今は足腰が痛いみたいであまり遠出とかしないですけど、昔は活発な娘だったのよーって言ってました!テニスや卓球が好きだったみたいで、男子にも負けなかったと話していたことがあるから。」
スポーツが得意なハイテクおばあちゃんか、のり子の中でなんとなく星野姉妹のおばあちゃんのイメージができていく。続けてかなも言う。
「そうそう!旅行も好きで、おじいちゃんと結婚する前は行きたいと思ったところへすぐお友達と出かけてたって。当時はカメラも高くって、しかも写真屋さんにお金払ってフィルムを預けて現像を待たないと見れなかったって。だからスマホで撮った写真をその場で確認できることに感動していました。撮り直しもできなかったのよーって。」
そうかこの子たちのおばあちゃんの身になったら、アナログカメラ→スマホのカメラの大躍進だもんなぁ。お孫ちゃんたちに感化されて使いこなしているみたいだけど。のり子がそう感心していると姉妹のスマホが同時に着信音を鳴らした。
「たぶん家族グループメッセージにおばあちゃんが送ってきたんだと思います。いつも私たち17時前には家に着いてるから…ほら。」
そういうとかながスマホの画面を見せてきた。
『今日は遅くなるの?お迎えは必要?』姉妹がおばあさんへもうちょっとで着くよと返信を打ち込む横で、のり子は感じていた。この姉妹は比較的裕福な家庭なのではないだろうか?と。
"おばあさんも小学生の姉妹もそれぞれスマホを持っていて、習い事までさせている。それってある程度は家計に余裕がないと難しいことじゃない?"と。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)
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