16章 謎の女-10
持ち物
タクティカルブロンズナイフ(右手に装備中)
コール・サンダーボルトのスフィア
回復剤×2
戦神の宝玉のスフィア
逃げ道はない…となれば、戦うしかない。
ゆっくりと、しかし確実に魔物の足音が大きくなり雅樹に迫ってくる。そして角を曲がり姿を現す。角も含めるとゆうに3mはあるだろうか、筋骨隆々の体で両手にバトルアックスを構えこちらを見た。目が合う両者、魔物は雅樹をその目に捕らえるとゆっくり体の向きを獲物の方へと旋回する。そして鼻息を派手にフシューッと鳴らすと、身構えた。
どうせ逃げたって左右の道は行き止まり、正面はアイツの巨体で塞がっていて無傷突破は無理だ。やるしかない!!
しかし雅樹はあろうことか、右手に持ったタクティカルブロンズナイフを魔物の足元へ滑らせるように放り投げる。距離が少し足りなかったか、ナイフは魔物の少し手前で止まってしまう。
魔物はそんなことには構わずゆっくり歩を進める、まるで獲物を追い詰めるのを楽しむように。一歩歩くごとにズシンと大きな音がなり、その衝撃で周囲の壁が呼応するように震える。
対する雅樹は空いた右手を素早くバッグに突っ込みアイテムを握ると、Bボタンを押す。
●システムメッセージ
あなたはコール・サンダーボルトのスフィアを発動しました!
スフィアの効果発動によって上空に小さな雷雲が召喚され、一条の雷が落ちる!
だが1mという距離は意外にも遠く、魔物の後ろに落雷は落ちた…。
ように見えた。
しかしなんと雷は魔物の足元にある避雷針に吸い寄せられるように進路を変える!そう、これは避雷針の原理である。雅樹はナイフを犠牲に雷を確実に当てる作戦を取ったのだ。
見事サンダーボルトが魔物にヒット、その巨体にびりびりとしたエフェクトが現れグォォと呻く魔物。どうやらアイテム説明の通り少しの時間麻痺するようだ。
雅樹は動けない魔物の足元をくぐり抜け、夢中で走った。
…。
… …。
… … …。
ハァッハァッ。
かなり遠くまで走ってきたはず、足音なども聞こえないししばらく大丈夫そうだ。なんとか逃走に成功した雅樹。
ふと思い出したように体力ゲージを確認すると、さっき一度全回復していたにもかかわらず残り65の表示になっていた。
斧の切っ先がかすめただけで35ダメージ…やはり良質な武器や防具なしでまともに殴りあえる相手ではない。雅樹はそう考えながら、回復剤を一つ使用した。
●システムメッセージ
回復剤を使用しました、今から1秒ごとに体力が3ずつ回復します。
そして雅樹はさっき見た魔物の見た目で思いついたことがあり、頭の中で一冊の本を思い浮かべて具現化した。それはギリシャ神話の本だった。
忠司が以前読んでいた本で、実は雅樹は忠司が依頼などに出かけているとき拝借してちょっとずつ読んでいたのだった。
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。