16章 謎の女-9
持ち物
コール・サンダーボルトのスフィア
タクティカルブロンズナイフ
回復剤×2
戦神の宝玉のスフィア
雅樹はここまで自分の頭の中でなんとなくのマップを作成しながら歩いていた。この迷宮が最初に見た通り円形だとして、自分が仮に南方向から入ったなら雅樹は南東方面に向かって現在進んでいることになる。
雅樹は宝箱を見つけたが、既に開けられていた。その奥に見える宝箱もやはり開いている…この通路は恐らく他のプレイヤーが調査済みなのだろう。方角で言う北の方向へ進路を変える雅樹。
そのとき、頭の中にまた声が流れ込んできた。
「お見事です!ミヤビ様がモンスターを討伐しました。ミヤビ様は現実世界に帰還し、ポイントを獲得します。余ったアイテムは開放済みの宝箱にランダムに戻され、モンスターが新たに補充されます。」
そうかこの迷宮にはターゲットとなるモンスターが常に1体だけうろついているんだ、それが倒されると新たに補充されるのか。と考えている雅樹の目の前の時空が突然歪む!
え…。
●システムメッセージ
モンスターが接近中です!
この迷宮の道幅、もとい壁と壁の距離は人が4人並んで歩けるくらいの広さだ。その通路を目いっぱい塞ぐように歪んだ時空からモンスターの姿が具現化されていく。
逃げなければ!人間は頭では分かっていても、本当に驚いたときは思考が停止してしまう。雅樹はそのことを身をもって実感した。
足から順に具現化されていき、まず体長は2mは余裕で超えているであろう高さが確認できる。皮の腰巻から覗く2本の太い脚に筋骨隆々の肉体、そして両手で大きな斧を抱えるように持っている。あんなのまともに食らったら大ダメージは確実だ!さらに頭には…悪魔のようなツノ?
フシューッ!という魔物の息遣いでハッと意識を取り戻した雅樹。気づくと既に斧が振り下ろされていた。
180度踵を返し、Aボタンを抑えながらダッシュで移動する雅樹。かろうじて直撃は免れたが、走り始める瞬間に斧の先端が背中にかすったらしく、ザシュッ!と音がした。
ドゴン、ドゴン!と背後の魔物が歩くたびに大きな音が反響し、ビリビリと壁が揺れているようだ。雅樹は必死に今まで描いてきたマーキングを思い出し、とにかく行き止まりに追い込まれないように走る!
体力ゲージを確認している余裕はないが、さっきの音からして自分はダメージを食らっているはず。恐らくもう一撃食らったら…。
この十字路はまっすぐ!次のY字路は右!その次の十字路は左!!
だが雅樹は逃げ道を間違えた。1本道に出てしまったのだ。そしてこの先は行き止まりのT字路…そう、片方がトラップだった宝箱のある通路のはずだ。
突き当りにつくと、やっぱり左右どちらも行き止まりだ。振り向くと、どんどん足音が近づいてくる!
どうする!
あのモンスターの大きな幅では横をすり抜けることは不可能だ!あの巨体だ、斧でなくても例えば足で蹴られただけでも致命傷だろう。
雅樹は右手に装備したナイフをぎゅっと握りしめた。
●システムメッセージ
モンスターが接近中です!
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。




