15章 特殊詐欺の行く末-49
「ねぇ八重島さん、田中さんをもう一度呼んでもらうことはできるかしら?それから、お手伝いの多見さんと…できれば田中さんのご両親も。」
「そうしたら真実が明らかになるというのか?連絡は取れると思うが。」
「えぇ。それとボイスレコーダーのデータは預かっておくわ、雅樹くんはアタシと答え合わせしましょうか?」
「はぁ…、オレはハッキリ分かってるわけじゃないんだけどな。」
二人で事務所の外に出ていくのり子と雅樹。そんな二人の背中を見ながら、忠司は俺だけ仲間外れかとちょっと寂しい気がしながら田中へアポイントを取り始めた。
一方、事務所のドアの外。
「雅樹くんが言っていた違和感って、…の…でしょ?あのときの…って部分が。」
「あっそうですよ、それそれ!おかしいッスよね?」
「やっぱり。」
2日後 事務所 午前11時
アポイントを取ったときになるべく早く集まってほしいと忠司が一言つけたことで、田中はスケジュールをずらしてまでかけつけてくれた。今日は休日なので田中父は仕事が休みであり、田中家3人打ち合わせてここに来たようだ。
来所者名簿に記名してからお入りください、とのり子が案内する。父親の周はツーブロックの髪型で眼鏡をかけたどこにでもいるサラリーマンという見た目だが性格はややせっかちそうである。母親の淳子の方は動きやすいラフな服装で現れ、性格は来所者名簿ですら書き方の見本をなんども見ながら記入するところを見るにやや神経質と言った感じ。風磨も続いて記入し田中家3人がソファーに座ると、最後にお手伝いの多見が入ってきた。
しかしテーブルを挟んだソファーは両方3人掛け、雅樹がパソコン用の椅子を持ってこようとするが多見はそれを断り田中家の後ろに立つことを選んだ。風磨が口を開く。
「重河の罪を暴き、アイツを逮捕してくださった皆さんと警察には本当に感謝しています。それでお話とはなんでしょうか?両親と、多見さんまで呼んで。」
のり子と雅樹で全員分の飲み物を出し終えると、事務所メンバーも田中家の対面に座った。今回はのり子が真ん中である。
「単刀直入に言いますと、おばあさまの件です。」
「!!」
田中家と多見全員の顔が強張る。
「そう、この事件はまだ終わっていないんです。あなた達が隠しているおばあさんのこと…気づいたきっかけは雅樹くんでした。」
のり子の意志を読み雅樹が引き継ぐ。
「違和感があったのはおばあさんの死の真実です。」
田中家側の4人は皆一様に黙っている。
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※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。