15章 特殊詐欺の行く末-47
(一応二人にも話してみるか。)
のり子は素早くスマートフォンのアラームを止め、そのままメモ帳アプリを開くと夢の内容をできるだけ詳しく入力した。
依頼人田中へ報告した翌日 朝9時 事務所
のり子が来客側のソファに座り、反対側に忠司と雅樹が座っている。
「変な夢ですね、昨日の今日で田中さんの件がのり子さんの頭の中に渦巻いているから、夢になったんでしょうか?ほらよく夢で見たい出来事は寝る前に強く念じるべしって言いますし。」
のり子の報告を聞いた雅樹が答える。
「うーんでも、それにしてはハッキリした夢よね。」
「なぜ川島田はそのおばあさんが田中利志子さんだと分かったんだ??」
質問したのは忠司の方。
「アタシの勘よ…って断言したいところだけどちゃんと判断材料はあるわ。前にテレビで田中さんの実家訪問もやっていてね、そのときおばあさんがインタビューに答えていたから顔は覚えているわ。夢の中で見た額縁の写真、ちょっと若かったけどおばあさんの面影があったし。そしてうつむいたおばあさんの横顔…ちょっと距離があったからハッキリ分からなかったけどおそらく。それに気になるのは、ほら雅樹くんは見たでしょ。依頼人の田中さん、去り際に一瞬変な表情をしたわよね。」
「ん?」
「あぁ忠司さんは金庫に小切手しまってましたからね、オレがおばあさんの話題を出したときに一瞬田中さんの顔が曇ったんですよ。普通は真犯人が捕まって嬉しいはずなのになんであんな表情したのかなって、オレ達ちょっと違和感を感じたんです。」
「違和感?そういえば雅樹くん、前にもそんなこと言ってなかったかしら?」
「え…あぁー!そうですよ。忠司さんに流されちゃってうやむやになりましたけど、お手伝いさんの話を聞いた日から何か違和感を感じてるんですよね。」
「俺が流した?」
「お手伝いさんの録音聞かせた後ですよ、『俺は特に何も感じなかったな』とか言われてそのままになっちゃったじゃないですか!のり子さんは途中で聞くの投げ出しちゃうし。」
「そうね、アタシは八重島さんに任せたからその録音最後まで聞いてないわ。今日は特に依頼は無いわけだし聞いてみようかしら、ボイスレコーダー貸してくれる?」
雅樹が自分のボイスレコーダーを取ってくると、のり子はそれにイヤホンを接続し聞き始めた。いつになく真剣な表情である。忠司は邪魔しないようパソコンの席に戻り、雅樹はのり子の手元にメモとペンを用意してあげると飲み物の用意をするためキッチンに向かった。
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