2章 行き過ぎた好意は困りもの-10
2022/9/22 17時。
事務所H・M・Oに突然白川がやってきた。のり子が慌てて応対する。
「あら白川さん、どうしたの急に?」
「あの後のこと、皆さんも巻き込んでしまったので報告がてらお話ししたくなって。」
のり子の言った通り女は強いのか、案外元気そうな様子の白川。
「こんなところじゃなんだから、名簿だけ書いてどうぞソファーへ。」
のり子が案内する。忠司と雅樹はちょっと気まずそうにしながら、いらっしゃいと白川と対面のソファーに座る。
のり子が白川にお茶を出したところで、白川が話し出した。
「月曜日も案の定、町出さんが来たので私思い切って言いました。『彼女さんとご結婚されるんですか?おめでとうございます!』って。そうしたらすごく幸せそうに笑っていました。この前の件で、私町出さんのこと好きになってたんだって気づいて。そんな町出さんが幸せそうに笑っているの見たら、なんだか私もうれしくて。」
そう言いながら半泣きで半笑いになる白川。H・M・Oのメンバーは黙って聞いている。
「でも、その反面なんだか悔しくって。なんでこの人の結婚相手は私じゃないんだろうって。どうして彼女がいる人好きになっちゃったんだろうって。でも私は八重島さんに言われたように、彼の幸せのサポートができるよう一番儲けの出るサービスを提供するつもりです!」
「そうよ!その意気よ。1回2回の失恋なんてどうってことないのよ、女は強いんだから!」
のり子は白川を慰めるように、自分に言い聞かせるように言う。
「合コンの件は、私が町出さんを好きなことを同僚たちが薄々気づいて、『町出さんも合コンくるけどどうする?』って私を引っ掛けたそうです。町出さんに彼女がいるってことは知らなかったみたいで、私がアタックするチャンスを作るつもりで合コン開いたみたいです。まぁ私も彼に恋人いるのかって一言聞けばよかったんですよね。」
白川はそう続けた。
「でもさ、その町出って人も罪な男よね。結婚前提の彼女いるなら合コンとか来るなっつーの!イケメンで背高くて、航空会社勤務でしょ?そういう男は彼女いますって看板を背負って街を歩くくらいしてもらわないと、女子が勘違いしちゃうわよ。」
のり子は他人事なのになぜか怒っている。そんなのり子を見てフフッと笑いながら、私もっと好きになれる素敵な男性見つけちゃいますから。その時はのり子さんに報告しますね!と明るく去っていった。
「白川さん、もう大丈夫そうだな。」
忠司が後姿を見送りながら言う。
「だから言ったでしょ、女は強いの。でも雅樹くんいいの?白川さん行っちゃうわよ?」
のり子が声をかけると、力のない棒読みボイスでボソッと答える雅樹。
「のり子さん、嫌味で言ってます?」
のり子がいつもの通り、じゃあ今回の件のまとめと戸締りよろしくねーと帰ろうとすると、忠司が引き留めた。なによ、と振り返るのり子。
「ありがとう、川島田。あの時止めてくれなかったら、俺は」
気にしなくていいわよ、とまた遮るように答えるのり子。
「女の気持ちは女が分かるってね!私こそ、年上の八重島さんに強い口調ですみませんでした。お互いさまってとこかしら?じゃ戸締りよろしくねお二人さん。」
颯爽と去っていくのり子を見ながら、女は強いな…と呟く忠司だった。
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22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後に改行)