15章 特殊詐欺の行く末-42
「では一つだけ確認させてください。重河さん、あなたはプライベートでご友人とお遊びになる際ときはご友人たちを招いてパーティなど開催されますか?」
そんなこと聞いてどうするんだろう?忠司の両隣で見守るのり子と雅樹の頭に同じ疑問が浮かんだが、ここは見守ることにした。
また重河も同じ疑問が浮かんだようだ。
「したことないね。今はマンション住まいだが、大人気アイドルってだけでマスコミ連中が定期的に付近を張ってるんだ。そんなことしたら目立つしスキャンダルになるだろうが。」
その答えを聞くと微かに笑った忠司は、そのまま話を続けた。
「やはり…そしてそれは"表向きの理由"ってところでしょう。そのように言っておけば誰も不審に思いませんからね。仮にも仲良しアイドルユニットとして売り出しているのに相方の田中さんが一度も訪ねないことも。」
「なんだと?」
「おかしいと思ったんです、世間的には仲良しを前面に押し出しているのに田中さんとあなたがプライベートで一緒に遊んでいるという情報が今まで一切出てこなかった。ご本人であるあなた達から『裏では不仲だ』という情報を聞いたときは納得しましたが、それでも普通そこまで仲良し売りしているのにプライベートで遊ぶ姿が一切見られないなんて辻褄が合いません。裏事情を知らない世間の人から見たらなおさら、です。」
忠司は立ち上がると、のり子と雅樹が未だ座っているソファーの後ろを右に左にゆっくりウロウロしながら話を続ける。ソファーとパソコン席の間にはちょうど人が一人通れるだけのスペースがあるのだ。
「つまりあなたが現在住んでいるマンションに、あなたが隠しているその証拠があるんです。誰も出入りしない自宅こそ、シンプルだが鉄壁の隠し場所なんです。」
一度ソファーの真ん中あたりで立ち止まって重河を見る忠司に対し、フッと鼻で笑って挑戦的な目を向ける重河。前かがみになり両肘を太ももに乗せ、かなり身を乗り出している。
「それで?なんなんだよその"大人気アイドルの自宅にある証拠品"って?詳しく言わないなら帰らせてもらうぞ。」
その言葉に大きく頷くと、重河にまっすぐ目を向ける忠司。
「あなたが詐欺犯である証拠、それはあなたが持っている"詐欺対象者のリスト"です。そこには今まで被害にあった人たちや、これからターゲットにする予定の相手の個人情報が大量に羅列されているでしょう。それが見つかればあなたは逃げられません。」
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