2章 行き過ぎた好意は困りもの-9
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/9/17 PM3時。
「白川さん、町出さんに結婚を考えている彼女がいるのはご存じですか?」
「し、知らないわよ。会社ではお仕事の話しだけだし、彼女いますか?なんて私が聞いたら気があると思われてもっとしつこくされるだろうからイヤだったし…。」
忠司が切り出すと、白川は明らかに今はじめて聞いたというリアクションでうろたえている。やっぱりなと内心思いながら、忠司は続ける。
「町出さんと同じタイミングでトイレに立った時、そのことを聞いたんです。ほら白川さんからも聞いてほしいと依頼されていましたからね。彼言っていましたよ、大学時代から付き合っていて結婚を見据えている彼女がいるって。夏のボーナスを白川さんの会社で証券取引に当てたのも、結婚資金を作るためだったんです。暇を見つけて証券情報を確認していたのは損失を出したくないため。それが何も知らない白川さんやその同僚にはやたら白川さんに会いたがっているように見えたのでしょう。」
白川は絶句している。反論しない辺り、薄々予感はしていたのだろうか?忠司はそんな白川を見ながら続ける。
「あなたの同僚はそんな事情を知らぬまま足しげく通う町出さんを見て、軽い気持ちで白川さんをからかった。ところがあなたは、それを本気にしてしまったんです。」
「うちに依頼しに来たのも、本当は町出さんを嫉妬させたかったからです。SNSなどでもそういう駆け引きをしたがる女性は多いですから。しかし彼は男連れで来た白川さんに、何のリアクションも取らなかった。当然です、町出さんには結婚を目前に控えた恋人がいるのだから。8月にもお盆休みを利用して、二人でオーダーメイドの指輪を作れる工房へ行ってきたと楽しそうに話していました。あなたにとっては残酷かもしれませんが、以上が依頼された町出さんに関する情報です。」
そこで忠司は大きく深呼吸し、再び口を開く。
「白川さん、大変言いにくいことですが…。町出さんはあなたには」
「そこまでよ!」
すかさずのり子が止める。それ以上言うな、ということだろう。年上の忠司に対しのり子は普段敬語であるが、それを思わせない強い口調だった。
白川は肩を震わせ、うつむいていた。どんな表情なのかは見なくてもわかる。だがこれ以上彼女が突っ走っても、明るい未来はない。そんな白川へ諭すように忠司はつづけた。
「町出さんのことが本当に好きなら、彼が幸せになれるよう応援してあげてください。そしてあなたはあなたの幸せを見つけるべきです。」
うなだれながら白川は帰っていった、そんな背中を心配そうに見送る雅樹。忠司も少し言い過ぎたかなと気にしていたが、のり子だけは案外平気な顔をしていた。
「大丈夫よ、女は男が思ってるよりずーっと強いの。彼女はきっと、町出さんよりイイ男見つけるわよ。」
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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