2章 行き過ぎた好意は困りもの-8
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/9/17 正午。
それまで黙っていた忠司がようやく口を開いた。
「川島田、白川さんを呼んでくれないか?町出くんは必要に応じて呼ぶかもしれない。」
2時間後、のり子から連絡を受けた白川がやってきた。どうぞと事務所に通されるとまず忠司に対して、合コンのあと見送りまでありがとうございましたと頭を下げた。今日は土曜日のため休みだったようである。
のり子と雅樹が見守る中で忠司は口を開いた。
「休日のところ申し訳ありません。実は我々H・M・Oはさっきまで頭を捻っておりました。しかし自分は合コンに同伴し、またメンバー2人と今回の件を話し合った末に一つの結果にたどり着きました。白川さん、結論から言うとあなたは大きな勘違いをしています。」
どういうこと?皆がシーンと静まり返る中、忠司は説明を始めた。
「順を追って説明します。まず白川さんは町出さんにアピールされていると仰っていましたが、逆です。あなたが町出さんを好きなんです。」
白川は黙っているが、目線を逸らした上に目が見開いた気がした。それを見ながら忠司は続ける。
「白川さんを連れて合コンの会場に行ったとき、町出さんはおー来たのかと軽く言った程度で特に目立ったリアクションを見せませんでした。彼があなたに気があれば、男を連れて来た時点でもっと驚くなり怒るなりの反応があったはずです。」
黙ったままの白川に対し、忠司が話を続ける。
「それに俺が引っかかったのは、合コンの席順です。"女性が先に座って男性が対面側に座る"という順番でした。つまり町出さんがあなたに気があるなら、正面か斜め前を取るはず。ところが彼は全く気にせず、あろうことか白川さんから一番遠くの席に座った。」
のり子と雅樹も、二人の様子を見ながら黙って聞いている。
「さらに幹事の女性が『先週、急遽4対4になった』と言っていたので白川さんがお手洗いに行っていたときにそれとなく聞きました。『白川さんために人数を増やした』と教えてくれました。白川さん、あなたは町出さんが来ると知って後から合コン参加に名乗りを上げたのではないですか?」
今日は晴天だが天気とは真逆の重い雰囲気が事務所に流れている。白川は手を付けようとはせしないが、のり子が淹れたお客様用のお茶をジッと見ながらうつむいている。忠司はそんな白川を見ながら静かに続ける。
「男性陣が対面に座り終えたとき、あなたはホッと一息ついたように見えました。でもあれは、意中の町出さんが近くに座ってくれなくて残念だという"ため息"だったんです。こう考えるとすべてが一本スジに通り、白川さんと町出さんの証言が矛盾しているのも納得できるんです。」
そこで白川が両手で握り拳をにぎりながら、ようやく口を開いた。
「じゃあ何?すべて私の恥ずかしい勘違いだとでも言うんですか?それで私はあなたに彼氏のフリを頼んだピエロ?言っておくけど、同僚たちからも町出さんが私に気があるって噂されているし彼は本当に週に何度も訪ねてくるの。会社の来訪者名簿を見てもらえれば分かるわ!」
それまでの大人しい口調は一転、一息に言いたいことをすべて含めたような激しい言い方だった。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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