15章 特殊詐欺の行く末-19
数日後、事務所。13時。
各々がお昼休憩をしていると、またしても警部から電話が。
「もしもし?」
『おはよう、その声はのり子くんだね。ちょうどキミに用があって電話をかけたんだよ。』
「何かしら?」
「…というわけで警部からまた弁護士見習いとして、弁護士が大沢の面会に行くから同行してほしいって頼まれたわ。」
「弁護士でもない川島田をわざわざご指名とは珍しいな。」
「それが警察から紹介できる弁護士は全員男性みたいで、男相手だと案の定口を割らないんですって。しかも前科が付いてることもあって大沢の悪評は弁護士業界に広まってるらしく、女性弁護士はみんな拒否してしまうそうよ。それでまたアタシの出番ってわけね。こっちとしても調査に行き詰ってるところだし、ちょうどいいかしらと思って引き受けたけど良いわよね?弁護士のフリってちょっと楽しいのよね、弁護士バッジとか偽造してるわけじゃないから嘘ではないし。」
こういうときだけ調子が良いところは、のり子と雅樹の妙に似ているところである。
「警部にも何か狙いがあるんでしょうか?もちろん顔見知りかつ一回大沢とも面会しているのり子さんが一番頼みやすいってのは分かりますけど。」
「それがこの前な、大沢のところに若い男が面会に来たらしいんだよ。保釈金がどうこうの話をしていたみたいで、警察がすぐ事情を聴いたんだ。だがそいつは3時間1万円で雇われた闇バイト、恐らく大沢の協力者が雇ったんだろう。指示されたメールアドレスも海外サーバーを経由した使い捨てのメールアドレスで誰が頼んだかまでは分からなかったそうだ。だが大沢の方に動きがあったから、また川島田を投入したら警察の方も捜査が進むかもしれない…そんなところだろう。」
「女性弁護士じゃなきゃダメ、なんてワガママ言える立場じゃないくせに贅沢な奴ですね。でもこれでまたちょっとは進展しますかね?」
「ちょっとじゃなく、うーんと進展するわよ。このアタシが直々に行くんだから。警部ともお話しして、週明けに国選弁護人と合流して行くことになったわ。」
「その日は依頼人の田中さんが来る日だから、今度はのり子さんが単独行動ですね!」
「そのようね、忘れずボイスレコーダー持って行くことにするわ。」
一方、某所。
???(あの男の言うことを鵜呑みにしたのが間違いだった、前回の詐欺事件の保釈金の額より数倍に跳ね上がってるなんて。大体ばあさんを自殺に追い込むなんて頼んでないのにやりすぎなんだよ。)
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