2章 行き過ぎた好意は困りもの-7
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/9/17 AM10時
昨日はそのまま合コンが終了し、3人は一旦それぞれ帰宅した。忠司が白川の恋人役になっている以上、彼女を送るフリをする必要があったからだ。
改めて合コンの翌日、H・M・Oのメンバーは事務所で顔を合わせた。自分で淹れたコーヒーを一口飲み、のり子が最初に口を開く。
「えーと…どういうことかな?昨日合コンの最中に八重島さんから送られてきた"町出さんに彼女がいる"っていうのは。白川さんの話をまずまとめてみるわね。」
・証券サービスの契約に来た時に知り合い、それ以降町出は頻繁に会社に来る。
・多いときは週4回も来ており、それは同僚にも「あなたに気があるんじゃないの?」とからかわれるほど。
・しかし白川本人にとっては迷惑であり、そのため"彼氏がいるから諦めてくれ"ということにしたくて今回H・M・Oへ依頼に来た。
・合コンは白川の同僚が立ち上げ、どうしても来てほしいと言われ断り切れなかったため八重島に同行してもらった。
そうだ、と忠司が続ける。
「俺も契約するとき、そのような説明を受けた。実際昨日の合コンの時も町出くんが一番遠くの反対側に座ってホッと一息ついていたようだし。」
雅樹が口を挟む。
「彼女がいるっていうのは、町出さんのウソの可能性もありますよね?白川さんにしつこく接しているのを周囲には勘づかれたくなくて、というウソ。興味ないですよーなんてフリをしながら白川さんの前でだけ本性を出すタイプです。一見すると人当たりが良いから、皆この手のタイプに騙されちゃうんですよね。」
しかし忠司が反論する。
「それが町出くんと一緒にトイレ行ったときにな、大学時代からの彼女がいて結婚を考えているとツーショット写真も見せてきたんだ。夏のボーナスを運用しようと思ったのも、結婚資金を作るためだったようだ。彼の発言や写真に矛盾は感じなかった。」
のり子と雅樹がどういうこと?と首をひねる。当たり前の反応である、白川の言い分と町出の言い分がかなり矛盾しているのだ。のり子が口を開く。
「だとしたら白川さんと町出さんのどっちかが、ウソをついているってことになるわよね?」そんなのり子の発言に頭をひねる雅樹。
「それなら、ウソをつく必要があるのはどっちですかね?白川さんはわざわざお金を払ってまで彼氏のフリをしてくれと依頼してきた。なんのために?町出さん側の彼女いる発言がウソの場合なら納得できますよ。実際は彼女がいない、白川さんと交際したくてつきまっているというスジが通るので。」
「まぁ八重島さんが見た町出さんとその彼女のツーショットっていうのが偽装ならその線も十分怪しいんでしょうけどね。合コン会場に入る前、彼氏のフリをした八重島さんを見ても町出さんが特にリアクションしなかったのも気になるのよね。普通、自分の意中の相手が恋人連れてきたらなんらかの反応するわよね?演技派な男なのかしら。」
そんな二人の意見を黙って聞きながら、忠司は今回の一件を頭の中で組み立てていた。依頼者の白川、彼女もちの町出、そして合コン…。のり子が淹れてくれたコーヒーに口をつけながら、ある仮説を思いつく。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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