15章 特殊詐欺の行く末-5
「オレ思ったんですけど、本当におばあさんは自殺で間違いないんですか?よく見るじゃないですか、自殺に見せかけた殺人~みたいな。」
雅樹の質問にすかさず首を振ってこたえる依頼人。
「それはないと思います、僕の自宅は警備会社と契約していて不審者が侵入したらすぐ警備会社に連絡が行くようになっているんです。それにおばあちゃんは浴室で手首を切り…ですが使用した刃物も手首の傷もおばあちゃん自身が付けたものと断定されましたから。おまけに最初に発見したのは多見さんというお手伝いの人なんですが、浴室の鍵は内側からかかっていたと言っていました。すりガラス越しにおばあちゃんが見え、いくら声をかけても返事がないことからおかしく思って無理矢理ドアを開けたら…と警察に話しているのを聞きました。」
「そこまでハッキリした自殺なのに、なぜ自殺で処理するなと騒いだんです?」
「決まってるじゃないですか、少しでも詐欺犯の大沢の罪を重くしてやりたいからですよ!アイツが手を下していないにしても、自殺をほのめかしたことによる自殺教唆なんかでアイツの処罰を重くしてやろうと思って。そういう意味で単なる自殺で処理するなと警察で騒いでいたんです。」
「ふーんなるほど。ところで犯人の大沢は誰かに命令された、と。ワイドショーでも報道されたくらいだから実際叫んだのでしょう。何か、心当たりは?」
「警察にも散々聞かれましたがよくわかりません。おばあちゃんは優しく聞き上手な人柄であまり敵を作るタイプではないし、そもそも僕はその大沢って犯人と面識もありませんからね。」
「そりゃそうよね…。ねぇアタシ思ったんだけど、この話って警部の特殊詐欺の話から来た依頼よね?もしかして特殊詐欺グループが関係していたりして?」
「さすが川島田、良い読みしているな。少なくとも警察側はそう見ている。」
えっ!と依頼人と雅樹は驚く。
「犯人の大沢に命令を下したのが特殊詐欺グループの幹部あるいは指示役ならすべての辻褄が合うからな。ただし肝心の大沢が口を割らない以上、裁判で罪状が決まるなどしたあとさっさと保釈金が払われ逃げられる可能性が高い。まぁ奴が大した情報を握っていない下っ端なら見捨てられる可能性もあるが、大沢の自信から見て奴はなんらかの捜査の糸口に繋がるだろう。」
「でもどうするんですか?話しの流れからしてオレたちは大沢の周辺をよく調べる必要がありそうですけど、肝心の大沢は拘留されていて近づけないし。かと言ってヘンに嗅ぎまわって警察に詐欺グループの関係者だと疑われるのも面倒くさいし。」
「それは俺も既に考えていたから、先に警部と示し合わせて手を打っておいた。大胆かつ確実に情報を手に入れる作戦があるんだ、それを川島田に頼みたい。」
「えっアタシ?!」
その後、正式に依頼を受けることになった。のり子が頼まれた作戦とは…。
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