15章 特殊詐欺の行く末-2
「さっきも言ったけど、詐欺を働いた張本人がこうして捕まってるじゃないの。アタシ達の出る幕じゃないと思うわよ?」
「いや警部によるとその犯人のO…大沢敬というんだが、大沢がどうやら特殊詐欺グループの一員だったというところまでは警察が突き止めたらしいんだがその先が掴めないらしくてな。もちろん大沢本人を何度も事情聴取しているそうだが、『俺様は保釈金を払ってバックれるだけだからさっさと手続きしてくれや』の一点張り。もちろんまだ裁判その他が終わっていないから当然拘留中だが。」
「そこでオレたちの出番…って、なんでそうなるんですか?」
「大沢はとても金に困っているらしい。今回の詐欺で得た2000万もどこかに流したようでその横流し先が詐欺グループなのではないかと警察は睨んでいるんだ。しかも大沢が得た報酬分は既にやつがパチンコや風俗でほとんど使っていて無一文に近かったのではないかと思われる。」
「ヘンね、無一文じゃ当然保釈金なんて払えないわよ?…あ!」
「そう、おそらく奴には協力者か共犯がいるんだ。」
「なるほど!その人が保釈金を払ってくれる計画になっているから、捕まっても余裕綽々ってワケですね。」
「そう。つまり今回は『警部からの特殊詐欺グループの実態解明補佐』と、『遺族から詐欺犯人の協力者探し』という二つの依頼が重なっているんだ。」
「ダブルミッションって感じね、なんだか燃えるわね!それで今は11時だけど、依頼人とは何時にお約束してるのかしら?ご遺族ってことは亡くなったおばあさんの、息子さんか娘さん?」
「約束は17時過ぎ、俳優Tの身内だから人目が無い方がいいと言ってな。この事務所もそんなに人手が激しいわけではないが、17時すぎならCLOSEの札をかけてしまえばいい。」
「そして依頼人は、その雑誌にも出ている俳優の田中風磨ご本人だ。」
え!と雅樹が大声を上げる。
「田中風磨って、アイドルコンビTANA・SIGEの?」
「何よ雅樹くん、そのリアクションは田中風磨のファンだったの?」
「いやオレの妹が大ファンで、ファンクラブにも入ってるんですよ。サインもらって妹に売りつけようかな~。」
「アンタねぇ、妹相手に商売するなんてロクでもないわね。」
「そもそも仕事だぞ。」
あきれ顔で次々ツッこむのり子と忠司。
「この二人って来年撮影が始まる映画の主演をかけたオーディションで、仲良しコンビが最終選考で戦う注目のバトル!って前にバラエティ番組でやってたわよ?」
「そのオーディションはもう終わって結果待ちのはずですよ!いや楽しみだなぁ~写真も撮ってもらおうかな。」
「雅樹くんがOKもらえたらアタシもお願いしちゃおうかしら。」
ドラマやバラエティをほとんど見ない忠司は二人の話についていけなかった。ただ二人の様子から察するに現在相当人気なアイドルだということは察しがついた。
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