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何でも屋 H・M・Oの依頼簿  作者: ゆうき
14章 生放送中の殺人事件
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14章 生配信中の殺人事件-秘匿4

 まだ3月上旬なので日差しは暖かいが、吹き抜ける風はやや冷たい。豊島はのり子の口から動機という単語が出た時点で警戒心をあらわにした。

 「なんや?赤の他人のアンタに何が分かるっちゅーねん。」

 「アタシが分かった気になっているだけかもしれません、だから警部さんにお願いしてここに呼んでもらいました。実はね…」

 そういうとのり子は、自分の身の上話を始めた。


 車内の警官と警部は以前二人のことを見守っていた。何を話しているんだろう?もちろん気になるがのり子に女同士の秘密よとクギを刺されているため、窓を開けることはできない。警部にとって盗み聞きするより気づかれて捜査協力してもらえなくなる方がデメリットが大きいからだ。


 のり子の話を聞き終えた豊島の横顔にそれまでの緊張感はなく、それどころか少し柔らかさも感じられるものになっていた。

 「ある意味、ウチの方がマシかもな。ただアンタは殺したらアカンで、ウチのようになったらアカンよ。」

 「ニリポンさんの件、本人が少しは反省を見せてくれれば殺すまでしなかったんでしょう?」


 豊島の動機。それは去年のとある撮影のあとニリポンと打ち上げに言ったときその本音を聞いてしまったことが発端だった。酔ったニリポンが口を滑らせた、『彼氏ほしいって言ってたし胡散臭いあの男がしつこいからちょうどいいスケープゴートになってもらおうと思った。あとは別れるも貢ぐも鈴ちゃん次第、まさか自殺するとは思わなかったけど私の知ったことじゃない』と。

 自分で親友に紹介しておいてなんて無責任で身勝手な…コイツは全く反省していない。目の前の身勝手なニリポンの言い分に、豊島の心は復讐の色に染まってしまった。

 豊島は登山仲間から、なぜ山の動物はキノコを食べないのかという理由を聞いたことがあった。山の動物は毒性があるかもしれないキノコを本能的に避けるという説があるという。山の動物がキノコを食い荒らしてしまえば、人間の市場にこれほどキノコは出回っていないだろう。

 その話を聞いた豊島は閃いた。鈴は服毒自殺したのだ、じゃあ同じ苦しみをアイツにも与えてやろうと。男を紹介しただけは何の罪にもならない、ならば私が手を下そうと。


 そうですか、と豊島の話を聞き終えたのり子は頭を下げた。その様子の意味を悟った豊島も、ほなさいならと軽く頭を下げ踵を返した。その背中に向かってのり子がありがとうと一声かけると、一瞬豊島の歩みは止まったがすぐ車に乗り込んだ。


 署に向かう車の中で豊島は一つ警部に頼みごとをした。

 「さっきの女の人、たまにウチのところへ面会に来てほしいって伝えてもらえるやろか?」

 「どうして?ほんの10分ほどでお友達になったんですか?」

 「…まぁ、そんなところやね。」




 豊島の車が見えなくなるまで見送ると、のり子は事務所に向かって歩き出した。その表情はとても硬かったがどこか柔らかく、そして足取りはしっかりしていた。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。

 ※5/18 更新分です

 ※筆者は他にも書いているものがあり、更新がない場合は他の作品を更新している可能性があります。〇日更新分ですを目安にしてくださると助かります。

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