14章 生配信中の殺人事件-秘匿2
2023/3/4 16:50 事務所
警部が大きな紙袋を2つ持って現れ、出迎えたのり子に1つ渡した。なんでも大勝ちしたのでお礼を持ってきたとのこと、ちなみにもう片方は妻に渡すと言う。
のり子が開けてみると、それはイギリス製の高級ティーセットだった。ティーポットとカップ6つなどの一式が揃っているものである、のり子は大喜びでこれから事務所の来客と私はコレを使いましょうと即決した。警部いわくさっき出してくれたお茶のカップの底が少し欠けていることに気づき、いつもお世話になっているからと奮発してくれたのだ。
そしてちゃっかり自分の分のカップを確保するのものり子らしい、だが忠司は別に文句を言わなかった。いつもおいしくコーヒーやお茶を淹れてくれるし、何より今回の事件はほぼのり子一人で解決していたからだ。のり子いわくこのブランドは7年以上修業を積んだ職人たちが作るところから梱包まですべて手作りで行うらしく、だからこそ希少価値が跳ね上がっており名実ともに高級食器なのだという。
警部が忠司から資料を受け取り一通り目を通し終えたところで、のり子が声をかけた。
「警部さん、この前は駅まで送ってくれてありがとうございました。今日はお礼に私が途中までご一緒しますわ。」
忠司は今度も何も言わなかった、わざわざ場所を移して話したいことがあるのだろう。でなければ今ここで、元刑事の自分の前で要件を伝えればいいはずだ。
「じゃあ八重島くんありがとう、また改めてお礼をするよ。」
そう言って警部が出ていき、のり子も後に続いた。忠司はパソコンをシャットダウンし、戸締りや電気の確認を始めた。
一方警部はいつも通る大通りではなく、わざと少し遠回りになる住宅街の路地へ歩いた。のり子も黙ってついていく…やがてベンチが3つ入口の近くにある小さな公園に入った。遊具が全くなく辺りも暗くなり出しているため、周囲には誰もいなかった。二人はベンチに座ることなく話し始めた。
「で、なんだねのり子くん。わざわざ待っていたということは何か話があるんだろう?」
「豊島さんのことで少し。彼女このまま逮捕されちゃうでしょ?その前に彼女と話してみたいんだけど、ダメかしら?」
「うーん本来はダメなんだぞ?」
「本来は、ってことはいいのね?さすが警部さん話が早いわ!」
「まぁ今回はのり子くんの手柄のようなものだからな、目を瞑ろう。恐らく来週中には逮捕状も出ると思うから、そのときにでも。ただし会話は我々警察の目が届くところで10分以内に、それが条件だ。」
「10分も時間をいただけるのね、ありがとうございます。」
「今回はいつにも増して勘が冴えわたっていたようだが、何かあるのかね?」
「まぁいいじゃない、女は女同士ってことで!」
のり子は警部の質問を笑顔であしらうと、スマホでニリポンのチャンネルをチェックした。やはりそのチャンネルは例の生放送動画が削除されて以降、まったく更新されていなかった。
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