14章 生配信中の殺人事件-秘匿1
「よし、ではこの推理を持ち帰って早速逮捕状を請求するとしよう。今回も世話になったな。」
残ったお茶を一気に飲み干してテーブルの上の資料を片付け始める警部、それを忠司がちょっと待ってくださいと引き留めた。
「警部、まさかその録音したデータをそのまま署で利用するつもりですか?」
「ダメなのか?」
「ダメですよ!俺達は警察組織じゃないんですから、いわば完全非公式で捜査協力してるんです。そんな一般人の俺達に捜査情報を流し犯人特定に利用しているなんて知れたら、褒められるどころか最悪懲戒処分ですよ!」
うーむなるほど、危ない危ないと感心しながらホッと胸を撫でおろす警部。
「今川島田が語った推理はこのパソコンのメモ帳に、ほぼ同じ内容で記入されています。足りないところは俺が追加して印刷しますから、小一時間ほど待機していてもらえますか?そうすれば俺らのことはバレないし、手柄も警部の独り占めにできます。」
「おぉなるほど!さすがは私の元部下なだけあって気が利くな。じゃあ近くのパチンコ屋で時間を潰してくるから資料ができたら教えてくれ。」
そういうと警部はそそくさと事務所を出て行った。
「奥さんに怒られないのかしら?あんなに頻繁にパチンコ通って。休日どころか定時で帰れる日も2~3時間くらい寄ってるって聞いたわよ?」
テーブルの上を拭きながらのり子がコップを洗っている雅樹に問いかける。お茶を淹れるのはのり子が担当しているが、洗い物は忠司か雅樹の担当だ。忠司は資料作りに集中してパソコンのキーボードを打ち続けているので、必然的に雅樹が洗い物係になった。
「オレ前に警部に聞きましたけど、奥さんに家でぐうたらしてるだけなら邪魔だからパチンコでも行ってきて頂戴って追い出されるらしいですよ。」
「よく聞くわよねそういう話。あれよね、亭主元気で留守がいいってやつかしら?」
結局そのあと忠司が宣言通り1時間ほどで資料を完成させ連絡したが、調子よく当たったらしく興奮した様子でもう少し待ってくれとメッセージが帰ってきた。
「あとは俺が資料渡して戸締りするだけだから、君たちは帰っていいぞ。今日は土曜日だから他に来客もないしな。」
忠司が促したが、のり子はちょっと警部に用事があるからと残った。雅樹は新しいゲームを買ったとかで喜んで帰っていった。
警部が資料を取りに帰ってきたのは、忠司の連絡を受け3時間ほど経過してからだった。もう既に夕方になっていた。
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
※5/15 更新分です
※筆者は他にも書いているものがあり、更新がない場合は他の作品を更新している可能性があります。〇日更新分ですを目安にしてくださると助かります。