14章 生配信中の殺人事件-スムーズな解決…7
「警察の基本というと、職務中は警察手帳を常に携行するとか?単独行動は原則許されておらず二人以上で行動するとか?」
警部が頭を悩ませるが、なかなかのり子がほしい答えは出てこない。
「そうじゃありませんよ、まぁ当たらずも遠からずって感じですけどね。守秘義務、これが犯人が豊島さんであることを決定づけるもう一つの鍵ですわ。」
のり子は一度コーヒーに口をつけ、喉を潤してから1つ警部に質問を投げた。
「ねぇ警部さん、もちろん事情聴取に呼びだした3人に捜査情報を教えたりしてないのよね?」
「当たり前だ。彼女たちはテレビや雑誌で報道された程度のことは知っていただろうが、無暗に情報を明かすようなことはせんよ。」
そんなのり子と警部のやりとりを聞いていた忠司が、そういうことかと呟いた。そして豊島の証言の資料を手に取って、改めて確信を得たような表情になった。
「なるほど…彼女は証言で両手の袖口を黒くするには、と犯人の特徴をハッキリ語っている。だがこれは犯人を特定するための重要な捜査情報であり、報道機関には明かしていない。そうですね警部?」
「あぁそうだが…あ!」
ここで警部もようやく気付いたようだ。
両袖が黒い長そでのような服をきた人物が毒を混入したという事実は犯人を断定する重要な情報であり、当然メディアなどには秘匿とされていた。だが豊島は事情聴取のときに袖口をニット帽で黒くするには2つ必要~と、犯人しか知らない袖口の情報を口にしていたのである。
「ね?動機・所持品・毒の入手法・犯人しか知らないことを知っている。犯人は豊島さんしかありえないわ。」
のり子の推理ではこうだ。当初は隙を見てどこかに毒を仕込むつもりだったが、ニリポンが偶然お手洗いまで一緒にと付いてきた。
そしてトイレの前でニリポンと別れると足音が立たないよう靴を脱ぎ靴下の状態でニリポンの楽屋へ引き返す。リバーシブルジャケットを反転して着てビニール手袋を両手にはめながら。恐らくニリポンが撮影前にいつもリハーサルしているのは知っているだろうから、用心して最初から録画状態を警戒し服装をごまかす算段だったのだろう。警察に軽い所持品検査をされるのも最初から想定済みでわざわざポケットのないタイプのジャケットを着てきているのがその証拠だ。
あとは映像のとおり楽屋に入ってサプリメントを仕込むだけ。いつニリポンが戻ってくるか、マネージャーがまた入ってくるか時間との勝負のため余計な事はせずそのまま楽屋を去った。その後は防犯カメラの映像を意識しスタジオに来た時と同じようにジャケットをまたピンクの面を表にして着直し、コンビニに出かけるだけ。毒混入の際につかったビニール手袋はどこかのコンビニのゴミ箱にでも捨ててしまっているだろう。
警部が長くて覚えられないというので、雅樹が警部のスマホを操作し以上の推理を録音してあげた。
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