14章 生配信中の殺人事件-スムーズな解決…6
「うーん…どうにもこういうのは苦手でな。君たちは分かったのかね?」
早々に白旗を上げ忠司と雅樹に助けを求める警部、それもそうだ。捜査資料などを何度見返しても犯人とその手口が分からなかったからこうして相談に来ているのだ。
先に口を出したのは雅樹。
「2つ?オレが分かったのは、黒い袖口の方です。豊島さんの趣味と持ち物、照らし合わせて考えると恐らく彼女が身についていたのはリバーシブルタイプのフリースジャケットだったのではないでしょうか?」
「りばーし…なんだそれは?」
いまいちカタカナ言葉に疎い警部を補足するようにのり子が口を挟む。
「要するに、表側と裏側でデザインや機能が違う洋服のことです。たまに深夜の通信販売の番組なんかで見かけませんか?『雨の日は裏返して撥水加工の面を表面にすることでカッパ代わりになります!』って売り文句にしてたりする服のことです。」
「君たちが言いたいのは、彼女が事件当時来ていた洋服がリバーシブルタイプだったら犯行が可能だと?」
警部はここで婦人警官から豊島の身体検査をしたときの報告を思い出した。たしか豊島の部屋は暖房が27度というかなり温かい部屋で、豊島は"フリースジャケットのピンクの面を表にしてハンガーにかけたまま"身体検査を受けたのだ。豊島の部屋で彼女の下着類まで調べた婦警たちだが、室温が高い部屋でフリースを脱いでいるのは当然だと思い込み豊島の所持品であることを確認しただけで終わらせてしまったのだ。ポケットがないタイプのジャケットだったことも豊島の計算の内だったのだろう、ポケットがあるタイプは中身を調べようと警官が必ず触るためリバーシブルタイプであることが即バレてしまうからだ。
「確かに室温27℃の部屋でフリースなんて暑くて着ていられませんから、暑いから脱いでハンガーにかけてあるとでも言えば不自然に思われない。やられましたね警部、豊島さんは『室温の高い部屋でわざわざ厚着をする人間はいない』という先入観を逆手に取っていたんですね。」
「さすが雅樹くんね、そうよ。彼女の来ているのは登山者がよく愛用する軽くて防寒性が高いリバーシブルタイプのフリースジャケットだったのね。ネットショッピングでもいくつか出てくるけど、恐らく山でも使える裏側が撥水加工されているものかしら?表面はおしゃれなピンクでも裏側は無難な黒色、よくある配色のパターンだわ。購入ルートなんかは警察の方で調べてもらったほうが早そうだけど。」
のり子が言い終わるのを見計らって、もう一度警部がのり子に向かって問う。
「だがのり子くんはさっき豊島さんが犯人である確証は2つあると言ったな?もう1つはなんだい?」
「そっちは警部さんか、元刑事の八重島さんの方が分かるんじゃないかしら?警察の基本よ。」
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